航空業界「年間減収2兆円に」 ANA社長 コロナ入国制限の拡大で

新型コロナウイルスの世界的な感染拡大が、航空会社の経営に大きな打撃を与えている。入国制限や国内移動の自粛で需要が大幅に落ち込み、路線の縮小が止まらない。国内航空最大手の全日本空輸を傘下に持つANAホールディングスの片野坂真哉社長は2日までに、産経新聞の単独インタビューに応じ、国内航空業界全体の年間の減収が2兆円に達するとの見通しを示した。雇用への影響も表面化し、戦後最大の逆風を「厳しい覚悟」で臨む構えだ。

【表】コロナ緊急事態、主要各国の対応は?

 国内の航空会社で構成する定期航空協会(会長=平子裕志全日本空輸社長)は、3月23日に官邸で開かれた「集中ヒアリング」で、2~5月の減収を4千億円と試算。今年1年間に1兆円規模の減収が見込まれるとの予測を発表した。

 だが、片野坂氏は、日本からの渡航者に入国制限を実施する国と地域の拡大を指摘。さらに減便と運休を余儀なくされるため、減収見通しを2倍に引き上げた。

 同協会は政府に対して、空港使用料や着陸料、航空機の燃料税、固定資産税の支払い猶予や減免、雇用調整助成金の引き上げなどを要望している。これを受けて菅義偉官房長官は「大きな影響が出ていることを踏まえて(4月に策定する)経済対策で資金繰りなどの支援を検討している」と述べた。

 ただ、片野坂氏は、「生き残りのためにあらゆる手段を尽くす」と強調。4月末のゴールデンウイーク(GW)前までの日程で、国際線で8割、国内線でも減便や運休を実施しているが、GW期間中の減便や運休も近く、発表する。

 さらに、全日空がハワイに注力するため、昨年5月から成田-ホノルル線に就航させた世界最大の旅客機「エアバスA380」についても、3号機の納入は当初予定の4月から延期。メンテナンス費用など機材関連コストを削減する。

 減便や運休で労働時間が減っていることを受け、4月1日から1年間、客室乗務員6400人を交代で一時休業させる。金融機関から1千億円程度を借り入れて手元資金を確保することや4月分の役員報酬の一部返上も決めた。

 国内航空業界では、日本航空も、役員報酬の一部返上を決定。4月から6月までを対象に、10%を返上する。ただ、収束の見通しの立たない新型コロナの逆風は強まるばかりで、追加の対応を迫られるのは必至だ。(大坪玲央)

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