船から旅立ち3年半 ドイツ少女の手紙、南鳥島に

【ベルリン=松井健】3年半前、ドイツの6歳の少女が描いた絵と手紙が入ったビンが、今年6月に日本最東端の島、南鳥島の砂浜に漂着し、自衛隊員が偶然見つけた。10歳になっていた少女は、突然の返信にびっくり。地元の町では「奇跡だ」とちょっとした騒ぎになっている。
 2006年秋、ドイツ東部の町コトブスは、町ができて850年になるのを記念し、手紙などを入れたビン850本を船に託して世界中の海に流すことにした。6歳だったミレーネ・クラウツィックさんも、チューリップや太陽の絵を描き、ビンに入れた。そして、それっきりビンのことは忘れていた。
 海上自衛隊第61航空隊の輸送機YS11の機関士、西田尚貴さん(34)は今年6月、物資補給に赴いた南鳥島の海岸でゴミ拾いをしていて、ビンを見つけた。危険物かもしれないと思いビンを割ると、絵がでてきた。ネット上の辞書と首っ引きで、ドイツ語のメッセージを読みといた。
 コトブスという町が実在することを確認し、英語で返事を書いた。「手紙を見つけました。あなたの国から届いた奇跡に感謝します」。絵の内容から、子どもだろうと想像し、折り紙や万華鏡など日本のおもちゃも同封した。
 7月21日、ミレーネさんは「日本から手紙が届いた」と聞いた。最初は何を言われているのか、わからなかった。翻訳してもらい、3年半前の自分の手紙に、遠い地から返信が届いたことを知った。南鳥島という地名は聞いたこともなく、地図で調べた。
 ビン入り手紙の主催者によると、ミレーネさんのビンは、06年12月に南シナ海を航行していたドイツ船から流された。850本のうち、これまでに返事があったのは、直後にスペインに流れ着いた1本だけ。忘れていたころに届いた返信に町中が驚いた。
 ミレーネさんは「また返事を書きたいし、西田さんと話をしたい。遠い島だけど、いつか行ってみたい」と話す。
 西田さんは「どうやって届いたんだろうと、いろいろ考えました。言葉がわからないので、返信も届かないかもしれないと思ったが、喜んでもらえたのがうれしい。南鳥島は何もないけれど、とても美しいところ。いつか見せてあげたい」と話している。
 南鳥島は東京の南東約1900キロの太平洋に浮かぶ孤島。自衛隊や気象庁の約20人が常駐している。

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