CFや募金…集金に奔走する主催者も
夏の夜空を彩る花火大会の警備費用が膨らみ、全国各地で中止に追い込まれる大会が相次いでいる。観覧客の安全確保や違法駐車の監視のため、警備員の数を年々増やしていることに加え、1人当たりの人件費も上昇しているためだ。主催者は募金箱を置いたり、インターネット上で資金を募るクラウドファンディング(CF)を試みたり、あの手この手で大会継続へ努力を続けている。
【写真】2018年の「関門海峡花火大会」
北九州市と山口県下関市で楽しめる「関門海峡花火大会」は1988年から開催。今年は8月13日に開くが、北九州市側だけで約50万人(主催者発表)が観覧するという。
同市の実行委員会によると、記録が残る2005年は警備員140人、警備費421万円だったが、昨年は約250人、1713万円に増加。今年は警備員を10人ほど増やすため、費用は05年の約4・5倍、1900万円を超す見通しだ。
観覧会場から約7キロ離れた海沿いのループ橋は見晴らしがよく、当日は違法駐車が増える。実行委の築城護・副委員長(38)は「違法駐車が見つかるたびに警察から警備員配置を指導される。範囲は広がる一方だ」と嘆く。
昨年、奈良県葛城市で1963年から続く花火大会が中止になった。違法駐車対策への警備費増などが理由だった。観覧客が増えすぎないようメディアへの露出を抑える工夫もしたが、実行委の担当者は「会員制交流サイト(SNS)の普及で年々観覧客が増え、警備が追いつかなくなった」と振り返る。岡山県玉野市の玉野まつりも、同様の理由で今年の花火打ち上げを休止にした。
膨らむ警備費を補うため、長崎県佐世保市のさせぼシーサイドフェスティバル実行委員会は、8月3日の花火打ち上げに向けて5月末から初めてCFを試行。目標額は300万円で、担当者は「消費税増税で来年はさらに経費がかさむ。持続可能な大会にしたい」と協力を呼び掛ける。
関門海峡花火大会では昨年まで大会当日に募金箱を置いていたが、今年は既にJR門司港駅前に設置。箱には「財源確保・人員不足」と記した。
花火の振興に取り組む公益社団法人「日本煙火協会」によると、2001年に兵庫県明石市の花火大会で起きた事故をきっかけに、警備の需要は年々上昇。福岡市の西日本大濠花火大会も安全性が確保できないとして、昨夏で終了した。同協会は「花火大会の継続には、観覧者のマナー順守や主催団体が新しい方法で資金を集めることが重要だ」としている。