花粉症を装う人のナイーブな心境、コロナ報道に過剰反応?

 新型コロナウイルスの感染拡大で、多くの人が疑心暗鬼に陥っている。電車などで咳をしようものなら周りから厳しい視線を向けられる中、「花粉症です」と書かれた缶バッジ「花粉症マーク」や「花粉症なんです」のタグがついたマスクが登場。これらは花粉症の人間にとって救世主的な存在といえるだろう。

 だが、この「花粉症だから仕方ない」という世の空気に便乗せざるを得ないとの声が。「風邪を引いた人」からである。

◆「風邪を引いたとは言えない」花粉症ぶる人

 都内の広告制作会社に勤める遠山仁さん(仮名・35歳)は、1週間前から風邪を引いたという。熱はなく、喉の痛みと鼻づまり、そして咳が出るといった、いわゆる普通の風邪症状だ。

「マスクはしてるんですが、咳をすると、鼻を啜ると周りの視線が気になって。隣の席の同僚から『大丈夫か? コロナか?』と冗談っぽく聞かれたんですが、『風邪を引いた』って言いづらくないですか? おいおい本当にコロナかもしれないぞ……と思われたら仕事もしにくいし。だから『いやぁ、花粉症で』『喉も痛くなるから咳が……』と言ったんです。ちなみに僕は花粉症になったこともありません」

 確かに、連日のようにコロナ関連の報道がされている今、「風邪気味で……」とは言えない気持ちもよくわかる。

「うちはフレックスですけどテレワークに対応していないので、会社に行かざるを得ません。『仕事休めよ』と思われるかもしれませんけど、ただの風邪ですよ? 小学生じゃないんだからそんな簡単に休めないです。というか、もちろん嫌ですけど、風邪で休んでコロナウイルス陽性ならば説得力がありますよね。

 でも結果、本当にただの風邪だったら。そんなんで数日欠勤しようものなら、周りから『風邪ごときで情けない』『くそ忙しい時期に』とか言われるじゃないですか。だから花粉症のフリして乗り越えるしかないんですよ」

 遠山さんは現在、職場で「花粉症の人」という認識を持たれることに成功したそうだ。咳をしても鼻をかんでも、風邪の引き始めのときと比べて、周りの目も気にならないと話す。

「ひとりの上司から『お前、花粉症だっけ?』と聞かれたときは焦りましたが『去年もそうだったじゃないですかー!』と言い、乗り切りました(苦笑)。あとの問題は通勤ですが、朝の満員電車に乗る必要はないのでなんとかなってますね。でも、やっぱり何か言われたらどうしよう……非常停止ボタン押されたら……って怖さもあるから、花粉症バッジが欲しいです」

◆「花粉症は自己申告だから」不安の声も

 一方、花粉症の人からこんな意見が。出版社に勤める井出真さん(仮名・40代)は言う。

「僕は本当に花粉症なんですけど、やっぱり職場の視線は怖いですよ。鼻水はずるずるだし、喉が痛いから咳もする。『こいつ大丈夫か?』って思われてるんじゃないか気が気じゃないです……」

 また、マッサージ師として働く小川京子さん(仮名・23歳)もこう話す。

「花粉症って自己申告だから難しいです。私はお客さんに事前に『花粉症なんです、風邪じゃないです』と伝えるようにしていますが、お客さんから『俺も俺も』と言われるとちょっと不安で。プライベートサロンなんで密室に2人きりだし、鼻ずるずるの人だと、『風邪では?コロナ?』とか疑います、その方が本当に花粉症だとしても。まあ、私も自己申告だし、不安なのはお互い様なんだろうけど(苦笑)」

 ちなみに、筆者が先日参加した飲み会で咳込んでいた男性も「花粉症です」と申告していたが、疑う気持ちを持ったのが本音。これ以上疑心暗鬼が広がらないよう、コロナの感染拡大が収束することをただただ願うばかりだ。<取材・文/ロケット梅内>

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