若年層の献血離れ深刻 すそ野を広げる“仕掛け”

 若年層の献血離れが深刻だ。10、20代の献血者は10年前のほぼ半減で、日本赤十字社は昨秋から「LOVE in Action」プロジェクトを展開し、「献血は愛です」というメッセージとともに献血の拡大に努めている。高校単位で行われてきた集団献血は減少の一途で実体験の場が失われていく中、来年4月、採血基準が見直される。献血離れに歯止めはかかるのか-。(日出間和貴)
 ◆アニメ・フィギュアで
 採血基準の主な変更点は、(1)400ミリリットルの全血採血の年齢下限を18歳から17歳に引き下げる(2)血小板成分採血の年齢上限を54歳から69歳に引き上げる-の2点。いずれも男性に限られ、中長期にわたる血液の安定供給が目的だ。
 厚生労働省血液対策課は「採血基準について、医師らによる『献血推進のあり方に関する検討会』で議論した結果、副作用は17歳男子でもないことが分かった。69歳に引き上げられる血小板も加齢による有意な差異がないことが報告された」と説明する。
 同課によると、医療機関の血液需要が400ミリリットルに移行する中で、高校生は大半が18歳未満であるため献血量は200ミリリットルに限定。このため、「献血の入り口」となる体験を身近に持てない。海外では採血基準の年齢下限を17歳に定めている国が多いという。
 献血を身近に感じさせるため、東京・秋葉原の献血ルームは若者が足を運びたくなるような“仕掛け”が施されている。献血と無関係なアニメやフィギュアなどの企画展示で誘客。一部の若者の中には献血をしないで帰ってしまうケースもあるが、「目的は違っても啓蒙(けいもう)活動の一環になっている」と関係者はみている。
 ◆献血回数年1・7回
 一方、キッズルームを設置する献血ルームは増加傾向にある。日本赤十字社によると、現在、全国に8カ所あり、昨年12月にオープンした「杜の都献血ルームAOBA」(仙台市青葉区)は「新しい献血スタイル」を提案、献血する親の姿を子供がガラス越しに観察できるという。
 献血ルームでの子供の遊び場の併設は、不足がちな20代後半から30代前半の子育て世代の母親に気軽に献血してもらうことが狙い。幼少期から献血という行為に触れることで認識を深めてもらう意味もある。
 厚労省が平成20年に若年層(16歳から29歳まで)を対象に行った調査で、「献血に関心あり」は45・8%。献血をしない理由は「針を刺すのが痛くて嫌だから」が目立った。また、家族が献血する姿を見たことがあるかの質問では、献血経験者が21・8%だったのに対し、未経験者は10・6%。献血者のすそ野を広げる意味で、仙台のような形のキッズルームを設置することは有意義だ。
 日本赤十字社の菅原拓男献血推進課長は「献血をする人でも、平均すると年に約1・7回と決して多くない。これまでは献血を一度すれば終わりという考え方が一般的だった。しかし、少子化が進む中で『LOVE in Action』の精神を継続的に持ってもらえるようにしたい」と話している。
 ■学校教育の中では扱い希薄
 昨年7月、保健体育の高校学習指導要領解説の中に「献血の制度があることについても適宜触れるようにする」と付記された。学校教育の中で、献血は積極的に扱われていないのが現状だ。「若者に献血の意義が正しく理解されていない」という声がある中で、献血がどう役に立っているのかといった情報を献血者にフィードバックする動きが出てきた。
 また、献血に対して明るいイメージを持ってもらおうと、献血推進キャラクターをあしらった“ラッピング献血車”も各地に登場している。

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