若者「映画館離れ」割引でストップ 高校生1000円で集客2倍

全国のシネマコンプレックス(複合映画館)やミニシアターで、高校生をはじめとした若年層の入場料金を引き下げる試みが相次いでいる。シネコン大手はこの夏、高校生料金を500円引き下げた結果、一部店舗では以前より2倍以上の集客を記録した。シネコンとミニシアターでは上映する映画や客数が異なるが、共通する目的は若者の「映画館離れ」を防ぐことだ。
 シネコン大手のシネマサンシャイン(全国13館)は今年3月から9月30日まで、高校生の入場料金を従来の1500円から1千円に引き下げている。運営する佐々木興業の運営課によると、キャンペーン前と比べ高校生の来場者は「3割程度増えている」といい、シネマサンシャインかほく(石川県かほく市)など一部店舗では2倍以上に増えているという。
 シネマサンシャイン沼津(静岡県沼津市)では今年9月、夏休み中に来場者数の多かった高校上位3校の生徒にポップコーンをプレゼントする企画も実施する。戸川喜史運営課長(48)は「放課後に若い人向けの映画を上映するなど、生徒や学生の興味を引けるようにしたい」と話す。
 MOVIXなどを運営する松竹マルチプレックスシアターズも、直営の26館で6月末から10月31日まで高校生の料金を1千円に引き下げる。TOHOシネマズは全国59館で、6月1日から始めた1千円を続ける予定だ。
 シネマサンシャイン池袋(東京都豊島区)に8日、映画「風立ちぬ」を見に来たさいたま市南区の高校3年の男子生徒(18)は「夏休みは週1回映画を見たいので、500円の割引はありがたい」と話し、東京都練馬区の高校2年の女子生徒(17)は「できればずっと続けてほしい」と笑顔を見せた。
 こうした値下げの動きはミニシアターが先行している。ユーロスペース(東京都渋谷区)は平成18年、高校生料金を1400円から800円、中学生も500円に引き下げた。シネモンド(金沢市)の場合、今年4月にこれまで1300円だった学生料金を1千円、高校生以下を500円に引き下げ、その代わりに一般・シニア料金を200円値上げした。シネモンドの土肥悦子代表は「これぐらい思い切ったことをしないと若い人は来てくれないと思った。一般、シニアの方には『将来への投資』としてご納得いただいている」と語る。
 将来の映画ファンの獲得は「業界全体が真剣に取り組まなくてはならない課題」(ユーロスペースの北條誠人支配人)だ。映画関係者は「若者は値段が安く家で見られるレンタルDVDや、スマートフォンでの鑑賞で満足してしまっているのでは」と懸念する。
 シネモンドの土肥代表は「まずは映画館に足を運んでもらうことが大切。劇場で他の観客と一緒に泣いたり笑ったりする楽しさを、若い人に伝えるための取り組みを各館が考えなければならない」と話している。(本間英士)

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