「若者の○○離れ」という言い方は多い。オヤジ世代が若い頃に当たり前だった行動が、今の若者世代には当たり前でなくなっていることを意味する表現だ。その背景には、環境や価値観のどのような変化があるのだろうか。
現在55歳のコラムニスト・小田嶋隆氏は最近、大手広告代理店に勤務する同年代の知人からこんなことを言われた。
「自分が新入社員の頃は、社会人になったらすぐにローンを組んで車を買うのが当たり前で、イキがってる奴は外車を買った。ところが、今の新入社員は入社から4か月経った今でも、誰一人として車を買っていない。理由を聞いたら、逆に『どうして車が必要なんですか』と聞かれたよ。いや~、驚いたね」 「若者のクルマ離れ」が言われて久しい。
総務省「全国消費実態調査」によれば、30歳未満の仕事を持つ単身男性の車普及率は1999年には63.1%だったが、2009年には49.6%に減少している。
「若者の海外旅行離れ」を物語るデータもある。法務省「出入国管理統計」によれば、日本人の海外旅行者数がピークだった2000年に20代の海外旅行者数は418万人だったが、2011年は281万人(震災前年の2010年は270万人で、さらに少ない)。
この他、「若者の高級ブランド品離れ」もよく指摘される。車、海外旅行、高級ブランド品こうした高額商品を、今の若者はかつての若者ほど買わなくなった。その背景には、言うまでもなく雇用の悪化がある。
総務省「労働力調査」によれば、男性の非正規雇用者の比率は、15~24歳で1990年に20.0%だったのが、2011年には49.1%へと跳ね上がっている(2011年は岩手、宮城、福島の3県を除く)。ニッセイ基礎研究所生活研究部門研究員の久我尚子氏が話す。
「正社員でも、昔は50代後半まで給与が上がり続けたのに、今は40代で頭打ち。今の若者はそれを見ているので、借金してまで高額商品を買うという感覚がないのです」
実は、内閣府「平成23年度国民生活に関する世論調査」によると、20代の73.5%が今の生活に満足しており(「満足」が12.9%、「まあ満足」が60.6%)、この割合は他のどの年齢層よりも高い。2番目に高いのは70歳以上で、「満足」と「まあ満足」を合わせて70.9%。
「若者は将来に不安を抱え、老人の将来は長くはありません。ともに今より幸せな将来を想像しにくいので、今を楽しむしかないのだと思います」(久我氏)