若者のコロナ感染拡大のペース加速、大阪府「制御困難なレベル」

新型コロナウイルス対応の緊急事態宣言が9月12日まで延長されたことを受け、大阪府は18日、対策本部会議を開いた。府は行動範囲の広い若者を中心に感染が広がり、コントロールが利かなくなっていると危惧。クラスター(感染者集団)も高齢者施設が主だった今春の第4波とは異なり、学校や企業などにシフトしており、現役世代へのさらなる感染拡大に懸念が広がっている。

 「20代、30代の感染状況は制御困難なレベルになっている」。府健康医療部の藤井睦子部長は会議で危機感をあらわにした。

 府によると、17日までの1週間の新規感染者数は計1万1117人となり、初めて1万人を超えた。

 感染の中心となっているのは30代以下の若者だ。20~30代の直近1週間の新規感染者数は前週比1・48倍。前週を前々週と比べると1・15倍で、感染拡大のペースが加速している。30代以下の新規感染者は、第4波(3月1日~6月20日)では全年代の47・7%だったが、第5波(6月21日~8月15日)では65・0%に上る。

第5波 企業、大学・学校でクラスター増

 どこで感染が広がっているのか。その一端がうかがえるデータがこの日の会議で示された。クラスターの発生場所を第4波と第5波で比較すると、入所者のワクチン接種が進む高齢者施設の割合がクラスター全体の39%から8%に大幅減となった一方、企業が16%から33%に、大学・学校も8%から19%に、それぞれ急増した。大学・学校では8月16日までの約2カ月間で18件のクラスターが確認され、このうち部活動が4分の3を占めた。

 府は、第5波の感染者に感染した可能性がある場所や出来事を聞き取った。回答した742人中、最も多かったのが、「百貨店やショッピングモールなどでの勤務」で34%に当たる249人に上った。「海水浴やドライブなどの旅行」が28%(207人)▽「出張」が17%(123人)▽「帰省・結婚式・法事など親戚の集まり」が10%(72人)――などだった。

 山口信彦副知事は繰り返される緊急事態宣言に関し、「府民には『またか』と危機感が共有されない部分があるかもしれないが、感染の特徴を考えれば、アクティブな40、50代や大学生らにしっかり呼び掛けることが大事だ」と訴えた。

重症化防ぐため抗体カクテル療法に注力

 感染拡大に伴い、病床も徐々に埋まり始めている。府が確保済みの重症病床587床には18日時点で158人が入り、使用率は26・9%。患者数は1カ月前の40人程度から急増し、第5波では40、50代が全体の53・1%に上る。確保済みの病床には別の疾病の患者が利用しているものも含まれ、コロナ用にすぐに使えるものに限れば325床で、使用率は48・6%にはね上がる。府は病床確保計画に基づき、すぐに利用できる重症病床数を一般医療に影響を与えない「フェーズ3」で対応してきたが、18日には非常事態に当たる「フェーズ4」に引き上げ、420床まで増やすよう医療機関に要請した。

 重症病床の逼迫(ひっぱく)を防ぐため、府が力を入れるのが患者の重症化を防ぐ抗体カクテル療法だ。府内125の医療機関で実施しているほか、8月下旬から宿泊療養施設1カ所で始める。吉村洋文知事は「生きるか死ぬかの瀬戸際で命を守るのが重症病床だ。右肩上がりの重症者数を早期治療によって抑えないといけない」と語った。【石川将来、矢追健介】

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