苦難乗り越え 赤い実り 再起のイチゴ初出荷

東日本大震災で大きな被害を受けた宮城県山元町の若者3人が設立したイチゴ栽培の農業生産法人「一苺一笑(いちごいちえ)」が24日、収穫した約10キロを初めて出荷した。大型ハウスの工期の遅れなどの困難を乗り越え、甘く赤い実りを育て上げた。
 佐藤拓実社長(30)らスタッフが仙台市から訪れた青果業者に「もういっこ」を納入した。イチゴは仙台市内のホテルなどで使われるという。「みんなの力を合わせて初出荷できた。これからがスタートだ」。佐藤社長は力を込めた。
 作間勝視さん(30)、土生哲也さん(29)と昨年3月に会社を設立。3人とも被災したイチゴ農家が実家で、親に代わって営農を続けるために力を合わせた。国の補助金などを活用し、7月、同町浅生原の1万平方メートルに4棟の大型ハウスを着工した。
 事業は苦難続き。11月に完成予定だったハウスは人員や資材不足でまだ完工せず、今季は予定の4割弱の規模でしか栽培できなかった。選果場と事務所もプレハブの工事事務所を間借りしたまま。一部の配管が不調で散水できず、自分たちで農場を回って水をまいたこともあった。
 ようやく実った赤いイチゴに、佐藤社長は「いちいちご」のブランド名を付けた。震災のあった3月11日に絡め、「11日の後(ご)」「11日からゴー」と再起を図る思いを込めた。
 栽培面積が限られ、今季の売上高は予定の2割弱の1000万円程度にとどまる見込み。苦労は続きそうだが、佐藤社長は「まずは認知してもらうことが先。復興の味を多くの方に楽しんでほしい」と前を向く。
 来月中旬にはホームページを開設し、ネット販売を行う予定。連絡先は佐藤社長090(5359)7699。

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