菅氏の安倍首相提訴、参院選民主に逆効果 「名前出るだけでマイナス」の声も

菅直人元首相の“暴走”に歯止めが利かなくなっている。参院選東京選挙区で、民主党候補の対抗馬を応援しているだけでなく、福島第1原発事故対応をめぐる2年以上前のメールマガジンについて、安倍晋三首相を突然提訴したのだ。菅氏の言動は、大逆風にある民主党の戦況をますます悪化させそうだ。
 菅氏は16日、安倍首相のメルマガがネット上で掲載されているのは名誉毀損だとして、慰謝料1100万円やメルマガの削除、謝罪記事の掲載を求める民事訴訟を東京地裁に起こした。首相経験者が現職首相を提訴するのは極めて異例だ。
 問題となったメルマガで、安倍首相は「やっと始まった海水注入を止めたのは、何と菅総理その人だった」と記載。これについて、菅氏は「いずれの事実も虚偽で名誉毀損だ」と述べている。
 ところが、政府や国会の事故調査委員会の報告書では、菅氏の主張とは異なる実態が浮かび上がる。
 東日本大震災翌日の2011年3月12日、海水注入による再臨界の可能性を「ゼロではない」とする班目春樹原子力安全委員長(当時)らに対し、菅氏は「大変じゃないか」「水素爆発が起きたじゃないか」と難詰。この場にいた、東電の武黒一郎フェロー(同)が、第1原発の吉田昌郎所長(同)に電話で「止めろ。官邸がグジグジいってんだ」と注入中断を指示した-などと記されている。
 最終的に、吉田氏の英断で海水注入はひそかに続けられたが、激高する菅氏に周囲が萎縮・忖度して、武黒氏が注入中止を指示したのは事実なのだ。
 政治評論家の浅川博忠氏は「菅氏や鳩山由紀夫元首相の名前が出てくること自体、参院選で民主党にはマイナス。有権者に3年3カ月の負の遺産を思い起こさせてしまう」と指摘する。
 一連の経緯も含めて、有権者は1票を投じることになりそうだ。

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