米メタが運営するSNSに掲載された著名人のなりすましとみられる投資関連広告のうち、99%超がLINEに誘導する内容だったことが読売新聞などのデータ分析でわかった。LINEに誘い込まれた人が詐欺グループにだまされ、投資名目で金銭を詐取される被害が相次いでおり、メタ・LINE側双方に対策の徹底が求められる。 【一覧】「なりすまし広告」が確認された主な著名人
メタが提供するフェイスブック(FB)やインスタグラムなどのSNSを巡っては、実業家の前沢友作氏らが4月10日、自身になりすました広告が多数表示されていると訴えた。SNSを見て興味を持った人が、LINEでのやり取りを通じて投資詐欺に引き込まれてしまうことから、政府も対策に乗り出した。
こうした動きを受け、読売新聞と東京大の澁谷遊野(ゆや)准教授(社会情報学)は、メタのSNSで4月20日までの1か月間に、日本向けに掲載された著名人のなりすましとみられる投資関連広告を分析。読売新聞の取材などで「メタに正規広告は出していない」と答えた著名人26人の名前や肖像が含まれたケースを対象に、掲載時の勧誘内容が詳細に確認できる1570件を調べた。
その結果、99・8%にあたる1567件の広告がLINEに誘導するURLを表示していたり、「LINE友だち追加」などの言葉を使っていたりした。
LINEのグループトークなど、外部からやり取りを確認できない「クローズドチャット」は、「通信の秘密は侵してはならない」とする憲法の規定から、プラットフォーム(PF)事業者も原則、監視できない。そのため詐欺グループに悪用されているとみられる。
警察庁によると、SNSを利用した投資詐欺の被害額は今年1~5月、前年同期の約9倍の430億円に上る。警察は捜査に力を入れており、同期間中に全国で8人を摘発した。
被害を防ぐため政府は先月、メタに対し、クローズドチャットに誘導する広告を原則として取り扱わないよう要請。LINEを念頭に、各PF事業者に対し、知らないアカウントから「友だち」に追加された場合、警告表示を出す対策も求めた。
メタは今月16日、3月5日~6月1日の間に日本をターゲットとした詐欺広告約527万5000件を削除したと発表した。ただ、政府の要請への対応については、取材に「現時点で共有できる情報はない」と回答した。
本人確認強化の必要性指摘も
LINEを運営するLINEヤフー(東京)は先月、政府が指摘した警告表示などの対策を始めたと発表した。
だが、LINEに対しては、利用を始める際の本人確認が不十分との声が上がる。現在の確認方法は、スマートフォンの電話番号を入力し、手元に届いたショートメッセージの数字を入力する「SMS認証」だけだ。日本弁護士連合会は昨年、総務省に「氏名、住所、生年月日などを公的な本人確認書類で確認することが望ましい」とする意見書を出している。
LINEヤフーは取材に、「国内では、携帯電話会社との契約時に厳格な本人確認を実施している」としたうえで、「厳格な本人確認とユーザーの利便性は相反関係にある。両立させるためにSMS認証を実施している」と回答した。