著名人のお墓を巡る、その名も“墓マイラー”ブーム

 墓マイラーという言葉をご存じだろうか? 墓マイラーとは著名人の墓巡りを趣味とする人たちのことで、歴史好き女子のことを指す“レキジョ”のブームやウォーキング人気が後押しとなって、最近、急増しているといわれている。
『著名人のお墓を歩く 谷中、染井、雑司ヶ谷編』(風塵社)の著者、あきやまみみこさんに魅力を聞いてみた。
「やはり、遠い存在の歴史上の偉人がとても身近に感じられ、悠久の時間を超えて会っている感覚になるところですね。心を落ち着けて手を合わせていると、故人と魂と魂で会話できるようです」
 毎日新聞で連載中の『菊水丸の墓標慕情』で四年にわたり約二百カ所の墓を巡ってきた伝統河内音頭継承者の河内家菊水丸さんも、世間に名を馳せた芸人の大先輩の墓前に立つと会話の時間が長くなるという。
「答えが返ってこないことはわかっているのですが、かなり専門的なことまで質問してしまいます。特に、私が生まれてすぐに亡くなられた方は『直接、お話がしたかった』という思いも強いので、気付くと数十分も手を合わせていることがあります」
 深く思いを寄せる人物の墓前で感情が高ぶってしまうのは、あきやまさんも同じ。
「手塚治虫さんのお墓に行ったときは涙が溢れました。幼少時、飼い犬に手塚さんのキャラクターの名前を付けたほど思い入れも群を抜いており、感慨深かったです」
 こうした非日常の感覚を得られるのも人気の理由。
「生前は栄華を極めた方が、淋しい山奥にひっそりと葬られていることも。その情景を見ていると切ないものがこみ上げてきます。直接、足を運ぶことで、普段の生活では考えない、様々なことを感じられる場所でもあるんです」(菊水丸さん)
 最後に、墓マイラー初心者のためにおすすめのスポットを教えてもらった。
「雑司ケ谷霊園ですね。夏目漱石や竹久夢二といった著名人が多く眠っていて、管理事務所には『雑司ケ谷霊園MAP』という無料の地図も置いてあります。周辺の美味しい飲食店も調べておけば、散歩の楽しみも増えるでしょう」(あきやまさん) (大平明)
(週刊文春2010年6月24日号「THIS WEEK 流行」より)

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