政府は、国内企業の蓄電池製造を後押しするために、2030年に600ギガ・ワット時の生産能力を確保する目標を設定する。20年の20倍となる高い目標で、民間企業の投資を促す補助金を拡充し、世界の市場占有率(シェア)を維持する。原材料の調達で優位になることを期待する。 【図表】世界の蓄電池の製造シェア首相官邸
蓄電池は電気自動車(EV)のほか、太陽光や風力発電といった再生可能エネルギーの普及に欠かせない。経済産業省が近く目標を示し、夏までにまとめる政府の蓄電池産業戦略に支援策を盛り込む。
目標では、30年までに国内に150ギガ・ワット時の生産態勢をつくる。これまでは、車載用を念頭に、100ギガ・ワット時の能力を目標にしてきた。残り450ギガ・ワット時は、海外生産を想定している。
車載用の製造ラインを国内に作る場合、6ギガ・ワット時で、約1000億円の投資が必要とされる。達成には、単純計算で10兆円規模が必要となる。今後、数年間にわたって民間投資を促す補助金を拡充する方針だ。
日本の車載用蓄電池の世界シェアは15年には4割を占めてトップだったが、20年には中国や韓国勢に押されて、2割まで低下した。原料となるレアメタル(希少金属)の確保を巡って、各国の競争は激しくなっている。一定のシェアを占めることで、材料確保に一定の影響力を持たせることを目指す。
当面はリチウムイオン電池が製造の主体となるが、30年頃には安全性に優れる「全固体電池」の実用化を目指すことも戦略に書き込む。