11月26日、安倍晋三首相は、来年度から白熱灯に 「省エネトップランナー方式」を適用する方針を明らかにした。政府は今後省エネルギー規制を進め、蛍光灯や白熱灯からLEDへの置き換えをめざす方針とい う。政府は、なぜ今この規制を行うのだろうか。蛍光灯や白熱灯をLEDに切り替えて消費者にメリットはあるのだろうか。
「省エネトップランナー方式」とは、指定した品目において、最もエネルギー消費効率が良い製品を作らなくてはならないという制度で、1998年の省エネ 法改正から導入された。今まではLEDと蛍光灯のそれぞれが指定されていたが、今後はLEDと蛍光灯、白熱灯を「照明」という分類で一括りにし、「省エネ トップランナー方式」の対象にする方針だという。これが実現すれば、LEDよりエネルギー効率が悪い白熱灯や蛍光灯は実質的に輸入や製造が難しくなる。
政府は、温室効果ガスを2030年度までに2013年度比で26%削減する目標を決定している。最も省エネな照明器具とされるLEDへの買い替えが進む ことは、温室効果ガスの排出量削減にとって重要な要素と考えられている。また、技術革新に頭打ち感がみられる蛍光灯に対し、LED電球は発光効率などにま だ大きな技術革新の余地があるとされており、規制にはLEDの研究開発をより本格的に促進する意味もありそうだ。
LED照明への切り替えは、消費者にとってはどのようなメリットがあるのだろうか。LED照明は、価格が高い一方、「省エネ」で「寿命が長い」ことを売 りにしている。近年生産が拡大されてきたLED照明だが、普及のネックになっているのは価格の高さだ。大手家電量販店では、白熱電球なら60Wで1個 100円程度、電球形蛍光灯は300~500円程度で買えるが、LED電球は約1000~3000円程度と10倍程度の価格差がある。この初期費用の高さ からか、2013年のLEDの一般への普及率は23%に留まっている(パナソニックの推計)。
省電力性で言えば、LED電球は、白熱灯の2割、電球形蛍光ランプの7割の電力で済む。LED電球が他の電球と違う点はその寿命だ。白熱灯は寿命が長い もので1000時間、蛍光灯は1万時間といわれているが、LED電球は4万時間。LED電球は、白熱灯の40倍、蛍光灯の4倍の寿命と言える。
では、LED照明と、蛍光灯や白熱灯どちらが得なのだろうか。経済産業省が2012年にまとめた資料では、毎日約5時間半ずつ使用した場合、LED電球 のコストは、約5カ月で白熱電球を、約3年で電球型蛍光灯を逆転するとしている。この場合、LED電球の寿命は20年となるので、最大限使えば残りの17 年間は電球形蛍光灯よりお得だという試算だ。
日本エネルギー経済研究所が2011年に発表したリポートによると、日本全体の白熱灯や蛍光灯などをすべてLED 照明に置き換えた場合、 1時間あたり922億キロワットを節約できると試算している。これは日本の総電力消費量の約9%に相当し、原子力発電所13基分という。初期費用の高さか ら敬遠されてきたLEDだが、政府の新規制が実現すれば本格的な普及が予想される。