多くの街路樹を抱える仙台市泉区役所が、夏を前に住民から寄せられる虫の駆除要請に戦々恐々としている。街路樹に付く虫の多くは「不快害虫」で素手で触れなければ害はない。それでも、「緑は好きでも虫は嫌い」という住民の苦情は増える一方で、手間や費用が増大している。
<触れなければ無害>
泉区公園課には例年5月から「街路樹に虫がいる」「(虫の)分泌物が落ちてくる」といった苦情が寄せられる。年間50件前後。初夏にピークを迎え、昨年は6月が19件、7月が13件、10月まで毎月数件ずつ続いた。
見つかる虫の多くはアブラムシのほか、アメリカシロヒトリやイラガなどガの幼虫。見た目は不快だが、触れなければ人体には無害だ。
問題は処理の手間と費用。薬剤による虫の駆除費は年間約450万円。枝切りなどで対処する場合もあり、それらも含めた管理費は年間約1億3000万円に上る。
<5区で最多の本数>
管理費が膨れあがる背景には泉区特有の環境がある。宅地開発が進んだ泉区内の街路樹は約1万5000本。7000~1万3000本のほかの4区よりも多い。
本数以外にも理由がありそうだ。枝切りや除草なども含め、区に寄せられた街路樹に関する苦情は2000年の約800件から昨年は約1570件と10年間で倍増。虫などに敏感な住民が増えていることがうかがえる。
住民の反応には致し方ない面もある。毎年、梅雨時にガの幼虫を目撃する泉区高森の60代の主婦は「緑は好きだが、虫は気持ち悪い。道に落ちた虫のフンも気になり、放置できない」と漏らす。
<行政への要望拡大>
「通報」を受けるたびに職員は現場に向かうが、財政難で予算と人員が限られる中、業務は「パンク寸前」(泉区)の状態だという。
泉区公園課は「環境や緑に対する住民の関心が高まるのはいいこと」としながらも、一方で「昔なら、その季節特有と割り切ることができた現象まで、行政に処理を求める人が増えている。行政に求められる領域が広がっているような気がする」と住民感覚の変化に戸惑っている。