政府は3日の閣議で、保釈中の被告に海外逃亡防止目的で全地球測位システム(GPS)端末を装着できるようにする新制度を盛り込んだ刑事訴訟法改正案を決定した。2019年に日産自動車前会長のカルロス・ゴーン被告(68)がレバノンに逃亡した事件を契機に検討された制度で、今国会での法案成立を目指す。 【写真まとめ】作業員に変装もバレバレ…ゴーン被告の保釈 改正案は、裁判所が被告の保釈を許可する際、海外逃亡を防ぐために必要があると判断した場合に限り、GPSの装着を命じることができるとする。 命令を受けた被告が飛行場や港湾施設といった「所在禁止区域」に立ち入ると、GPSが検知し裁判所を通じて検察官らに連絡される仕組み。正当な理由のない所在禁止区域への立ち入りやGPSの取り外しには1年以下の拘禁刑を科す。また、拘禁刑以上の判決を受けた被告については出国を制限する制度も設ける。 さらに、保釈中の被告や懲役刑の確定者が国内で逃亡する事案も相次いでいるため、公判期日に理由なく裁判所に出頭しない場合に適用される「不出頭罪」▽保釈条件で指定された住居に許可なく戻らない場合に適用される「制限住居離脱罪」▽保釈が取り消された後も出頭命令に応じない被告に適用される「出頭命令違反罪」――(いずれも法定刑は2年以下の拘禁刑)も新設する。裁判所が保釈を認める際に被告の「監督者」を選任できる仕組みも整える。 逮捕を経て裁判所から勾留決定が出た後に逃げる行為などを罰する刑法の「逃走罪」は、逮捕から勾留決定までの間に逃げた場合も適用できるようにし、法定刑も引き上げる。 また、今回の改正案には性犯罪やストーカー事件の被害者らを保護するため、起訴状や逮捕状、判決文で被害者らを匿名化できるようにする見直しも盛り込まれている。【山本将克】