被災マンション、跡地売却へ 改正法初の適用 仙台

東日本大震災で被災し、解体された仙台市宮城野区の「東仙台マンション」の所有者らが8日、改正被災マンション法に基づく跡地売却の決議を行った。ことし6月に施行された改正法では、売却に必要な同意が「全員」から「5分の4以上」に緩和され、要件を満たす初の適用となった。
 市幸町市民センターで開かれた集会には所有者ら約30人が出席。跡地約2370平方メートルを、宮城野区の医療法人に約1億9000万円(見込み額)で売却する決議に、140戸の個人・法人のうち、面積に応じた持ち分比率で委任状も含め9割以上が賛成した。
 東仙台マンションは1974年築の7階建て。震災で建物の沈下や壁面の崩落などが起き、市は「全壊」と判定。管理組合役員や不動産コンサルタントら4人が、2012年2月に一般社団法人「東仙台マンション清算協会」を設立し、跡地売却へ向けた作業を進めてきた。建物は12年8月までに解体を終えた。
 協会は、所有権の集約や行方不明者2人への対応、10戸に残る抵当権の抹消といった手続きを進め、早ければ来年3月ごろの売却を目指す。
 同マンションは改正前、行方不明で意向確認できない所有者がいたため、全員の合意形成が難しかった。震災当時に管理組合理事長だった菅井俊宏さん(42)は「専門家と協力しながら何とか跡地売却までこぎつけた。条件を緩和した現実的な法改正が追い風になった」と話した。
 協会の土谷信也代表理事(56)は「被災して困っているマンションの区分所有者に、今回の事例を参考にしてもらいたい」と述べた。
<意義深い震災適用>
 日本マンション学会元会長の折田泰宏弁護士(京都弁護士会)の話
 6月に施行された改正被災マンション法では、7月に東日本大震災が適用対象になった。その被災地で、実例が生まれたことは意義深い。一方で売却決議後の抵当権抹消や所有権移転といった手続きの規定がないという課題が残る。一般社団法人を窓口として設置した今回の例などを参考に、改正法を補完する制度やガイドラインの整備が求められる。

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