東日本大震災で被災した分譲マンションの共用部分の補修などを巡り、管理組合が頭を悩ませている。
マンションには部屋の所有者や賃貸居住者など様々な立場の人がおり、資金の分担について利害の調整が難しいからだ。合意が得られず、補修などのめどが立たないケースも目立っている。
「出せるわけねえっちゃ」。5月15日に開かれた仙台市宮城野区の分譲マンション(5階建て)の住民臨時総会。管理組合側が、共用部分の補修資金を所有者から集めることに触れると、高齢の女性が声をあげた。
地震の揺れと地盤沈下で、マンション外側の階段3か所の土台が崩れて傾き、廊下部分と最大50センチ離れた。部屋と廊下の間にも亀裂が入り、ドアが開かない部屋が続出、「全壊」と判定された。ただ、部屋の損傷は比較的少なかったため、管理組合は建て替えではなく補修を決めた。それでも費用は約1億円。地震保険に未加入のため、積立金1600万円では足りない。
マンションは全64戸。このうち自身で居住する所有者が23戸、賃貸居住者が26戸、ほかは震災後に転居するなどして空き家だ。高齢女性は、自身は住まずに部屋を貸す「賃貸オーナー」。居住者が対象となる国の被災者生活再建支援金は受け取ることができず、同市の場合、義援金も同様に受け取れない。そうした不公平感が費用負担に難色を示した背景にあるとみられる。