被災地、バブルの様相 宅地上昇率トップ10に宮城・福島8地点

 東日本大震災の被災地で地価上昇が止まらない。18日発表された公示地価によると、住宅地の上昇率は全国上位10地点のうち宮城、福島両県で8地点を占めた。石巻市の内陸側では被災者の自宅再建を見込んだミニ開発が進み、いわき市でも福島第1原発事故の避難者の移転需要が続く。専門家は「上昇傾向は続く」とみている。
 宮城県石巻市郊外の広渕地区(旧河南町)は上昇率が全国6位。1年間で11.3%上がった。
 国道108号沿いに商店が並び、大型ショッピングセンターまで車で10分程度の距離にある。利便性に着目した沿岸の被災者が移り住み、新築住宅が目立つ。開発業者による農地の宅地転用も進み、土地バブルの様相を見せる。
 地元の不動産業者は「あと5年は売買が活発な状況が続くのではないか。後継者がいない農家からは、早く農地を売りたいという相談が多い」と話す。
 広渕地区にある仮設押切沼団地の斎藤秀樹自治会長(46)も、同地区での自宅再建を検討している。「コミュニティーがしっかり機能している。災害時に必要な助け合いができる地域だと思う」と、震災を踏まえた視点で住まいを探す。
 いわき市は中央台など住宅地3地点が上位10位に入った。原発事故の避難者の移転需要が地価を押し上げる。
 福島県いわき市の不動産会社社長高木嗣郎さん(66)は地価上昇について「双葉郡からの避難者が積極的に土地を買っている」と分析。工業団地やごみ処理場の近隣など通常なら不人気の物件でもすぐに買い手が付くという。
 アパートなどの賃貸物件は避難者が長期間借り上げ、空き室がほとんどない状態。需要を背景に市内ではアパート建設ラッシュが起きている。
 高木さんは「住宅不足は原発事故という異常な状況が要因。災害公営住宅が次々に完成すれば、アパートは空き室ばかりになるのではないか」と懸念する。

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