被災地で生コン・セメント需要急増 原料の砂利不足 復旧の足かせ

東日本大震災の被災地で建設資材のセメントや生コンクリートの販売や出荷が大きく伸びている。震災から500日が経過し、被災3県(岩手、宮城、福島)の沿岸部を中心に港湾などの復旧工事が本格化してきたためだ。一方で需要急増に伴い、生コンの原材料となる「骨材」と呼ばれる砂や砂利の不足が顕在化している。
 セメント国内最大手の太平洋セメントの場合、被災3県を含む東北全体でのセメント販売量は、足元で前年同時期より5割弱も増えている。「前年は震災の影響で販売が落ち込んでおり、その反動増に加え津波の被害を受けた沿岸部で防潮堤や護岸の復旧工事が一部で始まっているのが大きい」と幹部は語る。
 セメント協会が26日に発表した6月の被災3県のセメント販売高は計21万1493トンで、前年同月比62%増だ。また、粉末状のセメントに骨材の砂や砂利、水などを混ぜてつくる生コンも需要が急増。全国生コンクリート工業組合連合会によると、6月の被災3県の生コン総出荷は計44万5755立方メートルで、前年同月からほぼ倍増した。
 一方、復旧の動きに伴って懸念が高まっているのが資材の調達難だ。生コン原材料となる骨材の需給が逼迫(ひっぱく)しているのだ。国土交通省が25日に発表した建設資材の動向調査結果では、被災3県での砂や砂利の在庫状況は「やや品不足」で、6月以降に不足感が強まっている。「宮城県では一時、骨材の出荷を制限する事態もあった」(業界関係者)ほどだ。「同じ生コンの原材料でもセメントは大手メーカーが相応の供給態勢を取れるのに対し、砂や砂利は中小メーカーが主体。復旧需要が急増しても一気に供給を増やすのは難しい」(経済調査会)とされ、骨材不足が復興の足を引っ張る恐れがある。
 一方、東日本大震災の被災地では、コンクリートを大量に使用する港湾施設の復興工事はこれからが本番だ。船舶から荷物の積み卸しをする岸壁の復旧工事。東北地方整備局によると、東北6県の水深4.5メートル以上の公共岸壁(299カ所)のうち、津波対策のかさ上げ工事などが必要な岸壁は全体の約7割に当たる210カ所も残っている。整備局は2年後の復旧を目指し、補修工事などを進めていく。復興庁は、地元産業に重要な役割を果たす港湾施設については、2012年度中の完全復旧を目指す。

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