被災地で被災者雇用 山形のNPOが気仙沼・石巻に拠点

 国際協力活動に取り組む山形市のNPO法人国際ボランティアセンター山形(IVY)が、東日本大震災で職を失った人を復興事業に雇う「キャッシュ・フォー・ワーク(CFW)」を宮城県気仙沼、石巻の両市で展開している。集まった寄付金を労働対価として支払う仕組み。IVYは「被災地で人とお金を回し、被災者支援と復興の双方につなげたい」と話す。
 IVY気仙沼、石巻の両拠点は4月に発足させ、被災者20~30人を雇用。個人や企業から集めた寄付約6000万円を資金に、時給750円を日払いしている。
 仕事はがれきや泥の撤去、救援物資の配達が中心。気仙沼では、仮設住宅に暮らす高齢者の支援事業も始めた。仮設住宅を回り、地元農家や店から集めた野菜や卵、コメを移動販売する「仮設朝市」が好評だ。
 6月に働き始めた気仙沼市の高松康雄さん(38)は、自営の魚屋が再開できずにいる。がれき撤去は重労働だが、「震災後しばらく何もできなかったので、気分が救われた」と喜ぶ。被災者でIVY気仙沼の代表に就任した高木裕治さん(34)は「故郷の復興に関われることが、何よりのやりがい」と張り切っている。
 IVYはカンボジアでCFWを実践した実績がある。阿部真理子理事(55)は「復興作業に参加し、地域を支える実感が持てるため、被災者の尊厳が保たれるのが大きい」と語る。
 被災地では、多くの職場が失われて求人が少ない上、建設関連など仕事も偏りがある。IVY気仙沼では就労者自身がニーズを掘り起こし、仮設住宅での「買い物代行」「配食サービス」など仕事の幅を広げている。阿部理事は「今後は活動エリアを広げ、来年3月ごろまで事業を続けたい」と、就労希望者と寄付金を募っている。
 寄付の振込先は山形銀行寿町支店、口座番号は普通512087。求職と寄付の連絡先はIVY事務局023(634)9830。
[キャッシュ・フォー・ワーク] 災害現場で被災者を復興事業に雇用し、現金を支給することで復興と被災者の自立支援につなげる国際協力の手法。国内の非政府組織(NGO)が2001年のインド西部大地震や04年のスマトラ沖地震、10年ハイチ大地震の被災地などで実施し、成果を挙げた。

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