被災地の松島、会津若松 修学旅行に復調の兆し

東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の影響で、2011年度は激減した福島県会津地方や宮城県松島への修学旅行が、ことしは回復の兆しを見せている。会津若松市では宮城県から訪れる学校が11年度に比べて倍増。松島の観光関係者も復調の手応えを感じつつある。修学旅行先の「定番」だった地に、わずかな光明が差し込んでいる。
 会津若松観光物産協会によると、会津若松市への修学旅行は、県外からの落ち込みが激しかった。震災前の10年度は県外から841校の小中高校が訪れたが、11年度は100校と激減し、10年度の12%にとどまった。
 特に最多の約4割超を占めていた宮城県からの減少は深刻で、10年度には358校だったが、11年度は59校に落ち込んだ。宮城県内の小学校の8割超は会津若松市を訪れる「常連」だっただけに、会津の関係者は危機感を強めた。
 会津若松市と観光関係者らがつくる「会津若松市教育旅行プロジェクト協議会」は昨年11月からことし1月、宮城県内の小学校420校を訪問。
 市内の空間放射線量や余震のデータを丁寧に説明し、福島第1原発からの距離は仙台とほぼ同じ約100キロなどと訴え、安全性をアピールした。
 地道な努力が奏功し、本年度は宮城から100校の修学旅行が確定。県外からの総計も、200校に回復する見通しだ。さらに宮城では、72校が「会津若松か他の地域かを検討中」という。
 プロジェクト協議会は災害にも備え、修学旅行向けの避難所一覧や連絡先をまとめた「安心マップ」も作成した。
 会津若松観光物産協会の渋谷民男統括本部長は「会津が修学旅行先として最適と理解してくれる先生も多く、うれしい。今後も活動を続け、県外からの修学旅行を増やしたい」と語る。
 一方、東北各県の小学校が例年訪れていた松島にも明るい兆候がある。
 松島観光協会などには「修学旅行の際、震災時や被災地の状況を児童に話してほしい」との依頼が目立つ。同観光協会の伊藤国雄専務理事は「私も6月に岩手、山形の3校の児童に被災当時の話をする」と話す。被災地への修学旅行を社会教育の場として活用したいと考える学校関係者は多いという。
 ただ、11年度の修学旅行生の入場が10年度の約1割に落ち込んだ「みちのく伊達政宗歴史館」の奥山完爾常務は「修学旅行がすぐに松島に戻るのは難しいだろう」とみる。
 東北以外の遠隔地からの修学旅行は、依然厳しい。新潟を含む東北7県の官民でつくる東北観光推進機構国内事業部の坂本文男部長は「九州や関西など東北から遠い地域ほど慎重だ。現地でのセミナーなどを通じて、粘り強く理解を求めていくしかない」と話している。

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