被災地を覆う意外な“お金&モノ”事情

【編集局から】東日本大震災の被災地を旅するなか、衝撃のセリフを耳にしました。「被災地のことはもう忘れてほしい」。言葉の主は宮城県気仙沼市の純喫茶「茶色い小瓶」の店主、山浦進市さん(69)です。
 山浦さんは自宅が流され、店も深刻な被害を受けながら、1000人規模の避難所で炊き出しの陣頭指揮をとりました。ほぼ不眠不休で地元の人々に尽くした人物が、なぜこんな思いに至ったのでしょうか。
 「全国からの物資の援助、義援金はありがたい。でも、もう物やお金は結構。深刻なのは被災者に支給されたお金が、ギャンブルやお酒に流れてしまっていること。働けるのに、お金をもらえる味を覚えてしまった人もいる。若い人が働く意欲を失ったままなら5年、10年後にこの土地はどうなります? だから忘れてほしいんです」
 今、大切なのは「心の復旧」だと、山浦さんは強調します。
 「人々が『もう一度やろう』と前向きな気持ちになるのが本当の復旧です。私自身は震災翌日に復旧しました。心の復旧なくして復興などあり得ません」
 街の復興は進んでいるように見えても、実は、多くの人々が復旧の状態にすら至っていないようです。(報道部・久保木善浩)

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