被災地路線価、女川80パーセント減 福島第1周辺「ゼロ」

 仙台国税局は1日、相続税や贈与税の算定基準となる路線価に、東日本大震災の影響を反映させるための地域ごとの「調整率」を公表した。納税者の負担軽減が狙いで、7月1日公表の路線価に調整率を掛けて震災直後の土地評価額を算出する。東北は青森、岩手、宮城、福島4県の全域が対象。調整率は宮城県女川町の一部が0.20となったのをはじめ、津波被害の大きい沿岸部で調整度合いが大きくなった。
 福島第1原発周辺の警戒区域と計画的避難区域、緊急時避難準備区域は「設定できない」として調整率は「ゼロ」と見なした。不動産市場が成立しておらず、国内外に先例もないためで、申告すれば相続税や贈与税がかからない。
 調整率は現在の復旧状況を加味していない。仙台国税局は来年7月公表の路線価について「あらためて来年1月1日時点の調査を基にする。現段階では調整率は適用しない方向」としている。
 対象となった東北4県の県別、地目別の調整率の適用幅は表の通り。宅地には商業地や工業地も含まれる。宅地は青森、岩手の一部が1.00となり、路線価がそのまま維持された。
 福島県のゼロを除き調整度合いが東北最大となったのは、調整率0.20の宮城県女川町の鷲神浜や桜ケ丘など。同県では東松島市と南三陸、山元両町の一部が0.25、仙台市をはじめ沿岸の10市町の一部が0.30となった。
 岩手県内は宮古、釜石、大船渡、陸前高田各市など8市町村の一部が調整率0.30で、調整度合いが最大。福島県はいわき、相馬、南相馬3市と新地町の一部がゼロに次ぐ調整率0.30。青森県内は三沢、八戸両市とおいらせ町の一部が調整率0.70となった。
 仙台国税局は沿岸部で調整度合いが大きくなったことについて「津波被害で死者が多く、住居に加えて水産加工場も流失するなど経済的影響も大きかったため」と話す。
 詳細な調整率は各税務署で閲覧できるほか、国税庁のホームページでも公開している。
[路線価の調整率]贈与税や相続税の算定基準となる1月1日時点の路線価に、震災の影響を反映させるための割合。ことし7月1日公表の路線価に掛けて震災直後の土地評価額を算出する。建物倒壊やインフラ被害、経済規模縮小などの要素を基に決める。調整率を適用できるのは相続税では2010年5月11日以降、贈与税では10年1月1日以降で、ともに11年12月31日までに取得、贈与した土地。今回の対象面積は東北以外も含め日本の17.1%に当たる約6万5000平方キロメートル。1995年の阪神大震災では約2000平方キロが対象で、調整率0.75が最も大きい調整度合いだった。

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