被災家屋修理進まず 3県まだ4割、3万戸未着手

 東日本大震災の津波で被災した家屋の修理が進まず、自宅2階などで暮らす在宅被災者が悩みを募らせている。大工ら修理に携わる職人が不足しているためで、宮城、福島、岩手3県で国が費用を補助する「応急修理制度」を申請した約5万3000戸のうち、約3万戸が修理を待っている。進捗(しんちょく)率は約4割。冬が近づき一日も早い作業が望まれるが、業者の処理能力も限界に達している。(成田浩二)
 応急修理制度の実施状況によると、宮城県では10月26日現在、4万1071戸の申請があったうち、工事完了は1万7403戸(42.3%)にとどまっている。
 市町村別では、最も申請件数の多い仙台市の修理の遅さが目立ち、1万5754戸の申請中、完了は3604戸(22.8%)。半壊を中心に被災家屋数が非常に多く、共用部分などの修理に住民の合意形成が必要なマンションが多いことも影響しているとみられる。
 全半壊家屋数が約2万5000戸に達した石巻市では、約1万戸が応急修理を申請。60.6%と比較的進捗率は高いが、約4000戸が未修理のまま残る。東松島市でも2000戸以上が修理を待っている状態だ。
 福島県は8905戸の申請に対し修理が完了したのは3488戸(9月末現在)。福島第1原発事故の影響で家屋の被害調査が進まず、申請に必要な罹災(りさい)証明を入手できていない被災者も多い。岩手県は2789戸の申請中1980戸が完了した(10月12日現在)。
 進捗が遅いことについて、宮城県建築安全推進室は「被災家屋数が膨大なのに対し、工事する職人が圧倒的に足りない」。仙台市財産管理課は「応急修理の申請があっても、その後業者から見積書が提出されるまで時間がかかるケースが目立つ」と説明する。
 建設業の職人でつくる宮城県建設職組合連合会によると、沿岸部を中心に需要が膨らんでおり、複数の現場を掛け持ちしている業者が多い。職人だけでなく断熱材や畳など資材の供給も追い付いていないという。山崎忠夫会長は「首都圏など遠方に職人の応援を頼もうにも、石巻などでは泊まる宿さえ確保できない」と明かす。
 応急修理制度は本来、震災発生から1カ月以内に工事を完了することが受給要件となる。しかし、被害が甚大なことを考慮して国は期間を延長。厚生労働省は「『応急』という言葉通り、いつまでも助成が続くことは制度の趣旨に反する」として、一定の時期に打ち切る方針を示している。
 業者の手が回らず修理完了まで時間がかかることを考慮し、石巻市は制度が存続する間に助成が受けられるよう、早めの申請を市民に呼び掛けている。
 仮設住宅の防寒工事などは県主導で一斉に実施されているが、一般家屋の修理は被災者自身で行う必要がある。個々の工事の進捗状況まで行政がサポートすることは現実的に難しく、在宅被災者が壊れた家屋で越冬する事態も想定される。
[応急修理制度]被災住民が市町村に修理申込書を提出、工事業者が見積書を作成する。市町村が内容を審査し、工事完了報告書の提出を受けて修理費用(上限52万円)が業者に支払われる。半壊、大規模半壊、全壊の家屋が対象で、半壊の場合は所得要件がある。仮設住宅に入居しないことが条件となる。住宅の補修では「被災者生活再建支援制度」の支援金も、被災条件により支給される。

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