被災寺で無料カフェ 住民の心のよりどころに

東日本大震災で被害が出た宮城県山元町花釜地区にある普門寺が月1回、無料のカフェを開いている。被災し散り散りになった住民が集まる場所をつくろうと、 住職が津波被災後に修繕した本堂を開放。ボランティアの男性が手作りする洋菓子を味わいながら、来店者は心豊かなひとときを過ごす。

カフェは「てら茶房」の名称で昨年9月にスタートした。コーヒーやお茶、タルトやババロアなどの季節の洋菓子が無料で味わえる。被災女性が主宰する陶芸教室や小物類の展示があり、月によってはコンサートも開かれる。
来店者は平均約80人。当初は寺の檀家(だんか)が主体だったが、現在は被災の有無に関係なく人々が集う。3回来店している森きよさん(80)は「被災地は多くの住民が離れ、お茶を楽しむ場所も減った。お菓子を味わいながら知人と会話ができて楽しい」と喜ぶ。
菓子類は、埼玉県川越市の会社員奈良信彦さん(48)が手作りする。震災直後から災害ボランティアとして同寺を拠点に活動してきた。離散した檀家(だん か)らが集まる場の開設を目指す坂野文俊住職(52)の思いに賛同。青森県内のホテルでパンを製造した経験を生かし、パティシエを買って出た。
7月25日に11回目を催し、一番人気のクルミのタルトや桃のムースなどを振る舞った。奈良さんは「生活の一部としてやっている。食べてみんなが笑顔になってくれれば、それだけでいい」と語る。
普門寺は県道相馬亘理線沿いにある。次回は8月29日に開店予定。坂野住職は「奈良さんの熱意があってこそ続けてこられた。地域住民の心のよりどころになればうれしい」と話す。

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