被災者と障害者がホップ栽培 仙台・田子西、クラフトビール完成

東日本大震災の災害公営住宅がある仙台市宮城野区田子西地区で収穫されたホップを使ったクラフトビールが完成した。災害公営住宅で暮らす被災者と、隣接する共生型複合施設「オープン・ビレッジ・ノキシタ」に通う障害者が主に栽培。作業は震災後に発展した新興住宅地の住民同士が交流する土壌も育んだ。

被災者や障害者が栽培したホップを使ったクラフトビール

 栽培は昨年4月、施設近くの農家が所有する300平方メートルの休耕田で開始。農業経験のある入居者らが障害者に作業を教えながら40本の苗を植え、水やりや草刈りを続けた。同8月、つるが高さ5メートルほどに生育したホップを収穫した。

 新型コロナウイルス禍により、多くの住民の交流を目指した収穫イベントは中止になった。それでも入居者らが毎日のように草刈りをしたり、畑近くの住民が井戸水を提供したりするなど、栽培は住民らの新たな関係を生んだ。

 栽培は県内でホップ作りを手掛ける一般社団法人イシノマキ・ファーム(石巻市)の助言を受け、醸造は世嬉の一酒造(一関市)に委託した。知的障害のある施設利用者が描いたホップやビールのイラストをあしらった2種類のラベルも製作した。

ホップ栽培に汗を流す災害公営住宅の住民ら(加藤社長提供)=昨年6月

 施設運営会社アイネスト(宮城野区)の加藤清也社長(58)は「ホップ栽培は土地と人という地域資源を生かした住民の活躍の場づくりにつながる。今年こそは収穫イベントを開き、多くの人に参加を呼び掛けたい」と語る。

 クラフトビール「Sendai ノキシタビール」は1本330ミリリットルで715円。施設では販売せず、世嬉の一酒造の販売サイトで注文を受け付ける。

 施設は企業、NPO、社会福祉法人の共同運営で2019年にオープン。就労支援カフェと保育園、障害者支援の相談窓口などがあり、誰でも自由に過ごせる地域拠点となっている。

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