被災者に非難され心ヘコむボランティアが続出「これしか持ってきてないの?」

今年4月に発生した大規模な地震により、避難生活を余儀なくされた被災者の方々。自衛隊など国の支援のほか、著名人からの義援金や一般の人々による ボランティアなども現地に集まった。特に、5月のゴールデンウィークを利用してボランティア活動に参加した人も多かったが、そのなかには「ボランティアな んて行かなければよかった」と後悔する人も多いという。

ゴールデンウィークに九州入りし、熊本に向かったAさん。Aさんは、辛い避難生活を送る熊本県の人たちを「少しでも笑顔にしたい」との思いから、数百個単位の食べ物を運んで行ったという。

「数百個の用意があるとはいえ、1人でも多くの人に行き渡るようにしたかった。だから、『1人に1つ』と呼び掛けながら、現地で配布していました」(Aさん)

しかし、集まったのは「ありがとう」と喜んでくれる被災者ばかりではなかった。

「みなさん、避難生活が続くうちにストレスにより平常心ではなくなっていたのかもしれませんが、『たった1つ?』『これだけしか持ってきてない の?』などと文句を言われ、なかには一旦離れてからまたもらいに来ようとする人もいました。でも、1つしか渡していない人もいるのに、誰かにだけ2つも3 つも配ると不公平になるし。こちらが『すみません、すみません』と頭を下げながら食べ物を配っている状況に、なんだか悲しくなってしまいました」

そんなボランティアを終えて地元に帰ったAさんは、複雑な胸中を吐露した。

「感謝されたくて行ったつもりはないけれど、まさかこんな気持ちにさせられるとは思っていなかった。ただ、それくらいの覚悟がないと、軽い気持ちで ボランティアなんか参加しちゃいけないんだと痛感しましたね。震災で住む場所を失い、生活の見通しが立たない毎日を過ごす被災者のみなさんは大きな不安を 抱えている。そのせいで普段よりもギスギスする人もいることをわかった上で行かないと、こちらがショックを受けて後味が悪くなってしまう。テレビで報道さ れるような感動のボランティアは、きっとほんの一部分を切り取っただけなのだと思いました」

●お互いの思いやりが必要

Aさんは当分、ボランティアをする気にはなれないと落ち込んでいたが、これについてマスコミ関係者は次のように語った。

「確かに被災者は厳しい生活を強いられ、誰かにストレスをぶつけたくもなるでしょう。しかし、Aさんのような思いをする人がほかにもいるとすれば、 ボランティアに参加してくれる人は今後どんどん少なくなってしまう。そうなれば困るのは被災地なので、やはり善意のボランティアには最低限の感謝を伝える ことが大切。もちろん、すべての支援に心から感謝している人だっている。ボランティアには、お互いの思いやりが必要といえます」

5月30日、中谷元(げん)防衛相は熊本で救援活動に当たっていた自衛隊の撤収を命じた。しかし、現在も避難生活を続ける人は多く、ボランティアも募集している。今後も復興には、日本一丸となって取り組まなければならない。
(文=編集部)

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