被災農地から牧草、発電へ バイオマスガス化構想 宮城・亘理

東日本大震災で被災した宮城県亘理町で、津波浸水農地で栽培した牧草を使ったバイオマスガス化発電構想が進んでいる。売電で収益を確保するとともに、廃熱を地域産業の復興に活用する。首都圏の若手経営者らで構成するNPO法人元気な日本をつくる会(東京)が2014年度中にも新会社を設立し、町と連携して事業着手を目指す。
 構想のイメージは図の通り。亘理町吉田東部地区の被災農地約50ヘクタールで栽培した牧草を、新設するバイオマスプラントで発酵させて生じるメタンガスで発電する。発電量は最大で毎時500キロワットを見込み、東北電力に売電する。
 発電で発生する廃熱の活用も計画。被災して休止し、14年度の再開を目指す荒浜地区の町営温泉施設「わたり温泉鳥の海」の源泉を加温するほか、既存工場や誘致を図る水産加工施設などで活用してもらう。
 プラントでは液体肥料や二酸化炭素も出る。これらは特産のイチゴを栽培する農家に販売する。肥料はイチゴの水耕栽培に適しており、二酸化炭素は苗の生育を促すために必要という。
 事業の情報発信も図り、視察や研修を積極的に受け入れる。町内への誘客と「わたり温泉」の宿泊客増加を図る。
 元気な日本をつくる会は、ことし3月に町職員とプロジェクトチームを設けて構想を検討してきた。事業調査費304万円を含む一般会計補正予算案は町議会9月定例会で可決された。町は年内にも調査結果をまとめる。
 ガス化発電を研究する地域環境資源センター(東京)によると、牧草を活用したバイオマスガス化発電はドイツなど欧州で先進事例があるが、日本での取り組みは珍しいという。
 つくる会の須田憲和本部長は「地域循環型社会の形成で産業振興や人の交流が進む。民間の力を活用して被災地を再生させたい」と説明する。町は「実現の可能性をしっかり検証して結論を出したい」と話している。

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