被災農家でシャインマスカット実る・山元

 東日本大震災で津波被害があった山元町の農地で、震災後に栽培したブドウの高級品種シャインマスカットが初めて実った。栽培する地元の食品加工業「田所食品」の田所林一社長は「イチゴ、リンゴに続く新たな町の特産に」と意気込む。
 田所社長は、独立行政法人農研機構などで構成する「地域再生(果樹生産)コンソーシアム」の早期復興に向けた実証研究を受託。2011年6月、10アールの畑で栽培を始めた。雨よけハウスに苗を植えた大型ポットを置き、集めた雨水を太陽光発電でモーターを動かしてまく省力化にも努めた。
 栽培開始から3年たち、高さ約1メートル80センチの棚に伸びる枝の先に大粒の果実を付けた房が、200個ほどたわわに実った。果肉は固めで甘く、薄い皮ごと食べられる。
 既に収穫を始め、亘理、山元両町の産直施設で1房1000円ほどで試験販売している。田所社長は「来年は収量が3倍程度に増えると思う」と手応えを語る。
 地元で収穫したブドウのジュースを製造してきた同社は、震災で所有する畑や工場に被害が出た。現在は内陸移転した新社屋で生産を再開し、畑の復旧も進めている。
 田所社長は「付加価値が高い果実で、栽培農家が増えれば被災地が一大生産地になり得る。年間通じて果樹を楽しめる町にしたい」と夢を描く。
 同コンソーシアムは9日、現地などで成果伝達会を開き、生産者らに研究成果を報告する。

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