東北の観光復興の加速を目指す観光庁は10日、東日本大震災で被害が大きかった岩手、宮城、福島3県で宿泊施設を営むおかみを招いた意見交換会を、宮城県 南三陸町で開いた。久保成人長官は、被災地の今を積極的に伝えて記憶の風化を防ぐ必要があるとして、国として情報発信の態勢づくりを支援する考えを示し た。
会合は南三陸ホテル観洋で開かれ、おかみ7人が出席した。同ホテルの阿部憲子さんは「1000年に1度の震災があった被災地は学びの場。修学旅行の誘致が必要だ」と訴えた。
旅館「新つた」(いわき市)の若松佐代子さんは「福島第1原発事故後、客が激減し危機感を持った。和とフラ文化を融合させた観光資源を創り出したい」と取 り組みを説明。宮古セントラルホテル熊安(宮古市)の熊谷礼子さんは「他県と連携し、従業員の能力を高めたい」と話した。
久保長官は、町内を回る語り部ツアーにも参加。津波で被災したまま残る結婚式場「高野会館」を視察し「語り部は被害の状況を知ってもらう大きな役割を果たしている」と述べた。
観光庁によると、2014年の3県の宿泊者数(従業員10人以上の宿泊施設)は約1015万人で、震災前(2010年)の86%にとどまっている。