内閣府所管の公益財団法人「総合研究開発機構」(NIRA、東京)は8日、東日本大震災で被災した岩手、宮城、福島3県の37市町村を対象に復旧・復興の状況を指数化し、公表した。生活基盤の復旧、産業経済の動向を基にした指数は、ともに岩手が堅調に回復。都市部や物流拠点に大きな被害が出た宮城、福島第1原発事故に見舞われた福島は立ち遅れており、地域間の格差を浮き彫りにしている。
「生活基盤の復旧指数」、経済関連の指標を軸にした「人々の活動状況指数」に関する3県の結果はグラフの通り。震災前の状況を100とし、「生活基盤」は被災直後から8月まで、「人々の活動状況」は6月までの動きを数値化した。
人口に占める避難者数、電力・ガス・鉄道・道路の復旧、がれきの撤去、義援金の支給など13指標を平均化した「生活基盤の復旧指数」は、岩手が3月の47.1から8月には79.6に回復。一方、福島は6月以降、足踏み傾向が続いている。
37自治体別に見ると、宮古、久慈など岩手北部の5市町村や、仙台市など仙台広域圏の5市町で85.7~99.7と復旧度が高かった。
石巻市は77.7、東松島市は69.6で、市街地が壊滅状態となった南三陸町は67.9、女川町は63.2。原発事故の警戒区域に含まれる双葉、大熊など5町は50台の低い数値にとどまった。
有効求人倍率、漁港水揚げ量、鉱工業生産指数、地方空港の乗客数と取扱貨物量など11指標を県別にまとめた「人々の活動状況指数」では、復興への足取りの違いがさらに鮮明になっている。
東北の物流拠点・仙台港や仙台空港、市街地の企業群などが打撃を受けた宮城は震災直後18.7に落ち込み、6月段階でも50.2に低迷。福島は3月(57.1)から6月(71.8)の伸びが14.7ポイントで回復度合いが鈍い。
今回の復興指数には反映されていないが、福島県から他県への避難者数は月を追うごとに増加している。今後の復旧・復興を考える上で、さらなる下押し要因になるとみられている。
NIRAは7月に検討チームを設け、データ分析などを進めてきた。神田玲子研究調査部長は「実効性ある政策を展開するには、被災の全体像と地域ごとの課題把握が欠かせない。震災復興の加速に向け、予算編成などの基礎資料に役立ててほしい」と話している