製造業の国内回帰、東北にも 円安急進で拡大

円安の進行で製造業の国内回帰の動きが東北でも広がっている。アイリスオーヤマが国内の発光ダイオード(LED)照明の生産能力を強化し、ホンダ系部品 製造大手のケーヒン(東京)は、製造ラインの一部を海外から宮城県内に戻した。TDK(東京)も秋田県内での新拠点建設を決めており、円相場次第では国内 回帰の流れが一段と強まりそうだ。(報道部・安住健郎)

<高効率化を図る>
アイリスオーヤマは2014年、LED照明の新ラインを佐賀県の鳥栖工場に増設した。LED照明は主力商品の一つ。9割を国外で生産し、ほとんどを逆輸入してきたため、1円の円安が8億円の減益要因になる。今回の増設で1割だった国内生産比率を2割に引き上げた。
大山健太郎社長は「国内生産で発注から納品までの時間を大幅に短縮できるのも大きなメリットだ」と強調。今後の新規投資も鳥栖工場に集約させる方針だ。
東南アジアや中国で人件費が高騰する中、円安基調のうちに国内で最新のノウハウを蓄積。さらなる世界展開に向けてラインの高効率化を図る動きもある。
ケーヒンは12年から、中国やタイにあった二輪車用インジェクターなどの生産ラインを宮城県丸森町と角田市にある工場に戻した。角田市の工場にある四輪車 用バルブのラインは自動化を徹底。中国では16人だった作業が角田では4人で済む。一つの工程に要する時間も2秒削り、生産性は4.6倍に上がった。
渡辺政美専務は「東南アジアでは毎年10~15%ずつ人件費が上がっていく。もはや昔のラインでは勝負できず、生産体制を国内で進化させてから戻す作業を進めたい」と話す。

<8年ぶり新工場>
TDKは8年ぶりに国内に新工場を造る。16年末をめどに本荘工場(由利本荘市)と稲倉工場(にかほ市)の敷地内にそれぞれ新工場を建設し、スマートフォンや自動車向け部品を製造する。円安で国内生産の採算性が改善したことと、世界的な需要増への対応が理由だ。
新工場は自動ラインなど最新設備を導入し「戦略的な生産拠点とする」(同社)。グローバル戦略上のマザー(主力)工場と位置付け、総投資額は約250億円に上る。
TDKは業績悪化で11年秋から秋田県内の拠点再編を進めてきた。今回の工場新設計画に、にかほ市の須田正彦副市長は「地元の協力会社にも大きな影響が出ていただけにうれしい。今後の雇用拡大に期待する」と歓迎する。
日銀が大規模な金融緩和を決めてから約2年。NECトーキンも「(国内回帰の)検討の余地がある」と説明するなど、製造業者にとっては、為替とコストの両にらみの状態が続く。

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