観光ソング 友思い演奏 不明の南三陸町職員が作詞作曲

 東日本大震災で行方不明になった南三陸町職員が作詞作曲した町の観光テーマソングを、知人らが31日の「福興市」で演奏する。避難所で一人で暮らす職員の母親を励まそうと、会場に招いて音楽を届ける。演奏するメンバーは「町を盛り上げようとの思いが詰まった曲。大勢の人に聴いてもらいたい」と話している。
 曲を作ったのは町企画課職員の佐藤義男さん(45)。3月11日に町役場防災対策庁舎の屋上で大津波にのまれ、行方が分からなくなった。
 佐藤さんは趣味でチェロやピアノを弾いた。好きな音楽で町を盛り上げようと、冬のイベント「おすばでまつり」にちなんだテーマソング「おすばでサンバ」を2年前に完成させ、町観光協会が本格的に広めようとした矢先だった。
 曲のアレンジを手掛けたのは、佐藤さんの知人でシンセサイザー奏者の高橋泉さん=富谷町=。5月末、佐藤さんの母親やす江さん(70)を訪ね、「息子の作った曲をもう一度どこかで聴けたら」との願いを聞き、演奏を決めた。
 歌詞は南三陸町の魅力が満載で、特産のタコやアワビなど海の幸が登場する。高橋さんは「義男さんは行方不明だけれど、曲は残っている。聴くと、こんなに美しい町だったんだと皆に気付いてもらえるはず」と言う。
 やす江さんは、サンバの歌詞を書いた紙を肌身離さず持っている。演奏の知らせに「本当にありがたいこと。町のどこかで義男が聴いていることを願っています。早く出てきてほしい」と目を潤ませた。
 福興市のステージには、仙台や札幌からサックス奏者やボーカリストら3人も駆け付ける。
 福興市は午前10時~午後2時、南三陸町志津川の町総合体育館前特設会場で開催。高橋さんのステージは午後1時ごろの開演を予定している。

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