仙台市は、災害時の外国人観光客への対応などをまとめた「市観光危機管理マニュアル」の原案を明らかにした。滞在場所や情報の提供方法、死傷者が出た場合の対応などを記した。付録として多言語アプリや災害・交通情報サイトを一覧できる2次元バーコード集も作成。観光関連施設などで掲示、配布してもらう。
マニュアルでは、大地震や風水害、津波、武力攻撃、感染症によってもたらされる被害を「観光危機」と定義。事前に基本的対応を定めることで被害を最小化し、観光客への情報発信・安全確保、観光産業の早期復興・事業継続支援を迅速、確実に実施するのを目的としている。
外国人旅行者が宿泊施設に滞在できなくなった場合、JR仙台駅東西自由通路やホテル、専門学校、結婚式場など「一時滞在場所」に誘導する方針を明記。複雑な対応は仙台駅構内の観光案内所が担う。
意思疎通では、大災害時に仙台観光国際協会が運営する「市災害多言語支援センター」から通訳の支援を受ける。観光施設などには音声翻訳アプリや、困りごとを14カ国語と絵で表した自治体国際化協会(東京)作成の「多言語指さしボード」の活用も促す。
外国人観光客が死亡した場合は遺体を「大使館を通じ家族と連絡が取れるまで、宗教上の多様性を踏まえて一時保管する」と規定。負傷した場合は避難所救護所などが応急救護し「医療費の扱いは自由診療が基本であり、海外旅行保険への加入有無を確認する」との留意事項も記した。
市内で11月9~11日に開かれる国際会議「観光レジリエンスサミット」(観光庁主催)に向けて、今月22日に開いたワークショップ(WS)で原案を示した。参加した交通事業者ら約30人からは「東北新幹線の長期間運行停止など交通障害も想定する必要がある」「貸し切りバスに乗る外国人を受け入れ可能な避難所を示してほしい」などの意見が上がった。
市は意見を踏まえて原案を修正し、10月上旬ごろに開かれる次回のWSでマニュアルを決定する。