自治体の観光行政がいよいよ仁義なき戦いに突入しそうな、大きなニュースが飛び込んできました。
宮城県、観光客の旅費半額補助へ
http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201502/20150220_11017.html宮 城県は19日、県内を訪れる観光客の宿泊代や交通費を、半額程度助成する事業に新年度から取り組む方針を固めた。旅行券や旅行商品を販売する事業者などに 割引相当額を補助し、東日本大震災で落ち込んだ観光客入り込み数の回復を期す。関連経費約10億円を計上した本年度一般会計補正予算を開会中の県議会2月 定例会に追加提案する。
補助対象は、インターネットのサイトや旅行会社の窓口で販売される宿泊施設と鉄道や飛行機のパッケージ商品な ど。ほかに、観光客が県内の宿泊施設で利用可能な旅行券をサイトや旅行会社、コンビニエンスストアなどで割引価格で購入できるようにする。一部は4~5月 の大型連休前の利用開始を目指す。
旅費を直接税金で補助…。世の中に行政補助の形というのは数多くあれど、商品価格に直接公的補助を入れて価格ダンピング的な廉価販売攻勢行うというのは完全に「禁じ手」の部類です。
この宮城県の施策は、政府の「地域住民生活緊急支援交付金」、すなわち俗にいう「地方創生予算」を利用して行うもので、今までも他県の動きのなかで商品価 格を補助するような提案もないことはなかったワケですが、利用者や利用方法を限定するなど、もっと「慎ましやか」に検討が行われてきたもの。今回の宮城県 のように、大々的かつ包括的、そして何より「半額補助」というトンデモナイ補助比率で一種の価格ダンピングを行うというのは、宮城県はあらゆる批判を一身 に受ける覚悟をもって施策決定しているといえます。
変な話、これが行政倫理的に認められるのならば、観光商品のみならず、全国の自治体が地域産品に一斉で補助合戦を始めます。この種のものは自治体にとって も「消費者の奪い合い」の分野ですから、隣がやるなら自地域も同様に動かなければ地場産業が死滅してしまう。まさに「やらなければ、殺られる」の仁義なき 戦いの幕開けと言えましょう。
そして、何よりこの報道で悲鳴を挙げているのは、宮城県との県境に位置する近隣県の観光地です。政府の地方創生予算は、これから先一年の使い道を「今」決 めなければいけないもの。他県が、今から宮城県に対抗する施策を準備するのは時間的に不可能ですから、おそらく来年4月以降の一年は宮城県内観光地の独走 が続きます。一歩県境を越えたら旅費の補助がでるわけですから、消費者は当然のように宮城を選択するわけで、近隣の観光地にとっては影響が甚大です。
そのような価格ダンピング攻勢を一年間にわたって仕掛けられれば、周辺県にある大抵の観光業地は完全に「干上がって」しまうワケで…今からその地獄絵図は 想像に難くありません。そして、来年以降、宮城県の観光地はそうやって近隣が「焼け野原」になった市場で悠々と商売をする、と。まさに仁義なき戦いの様相 です。