記録的大雪にネットの力 「危機的状況」いち早く伝えたツイッター

「全国ニュースはオリンピックですが、山梨県孤立してます」-。
 記録的な大雪が関東などを襲った15日、こんな「SOS」がツイッターで各地から発信された。都心の雪だるまなどほのぼのとした写真に交じって、交通や物流が遮断されたことを示す写真などが共有。現地の危機的状況をテレビより迅速に伝え、ネットの力を改めて見せつけた。
 「[拡散希望] 現在山梨では交通網が遮断され断水や停電している地域、車中泊を余儀なくされている人もたくさんいます」
 山梨県のネットユーザーは、雪が屋内まで浸入している画像や、雪の重みで車庫がつぶれている画像を次々にツイッターに投稿した。「車内に閉じ込められている」といった状況が明らかにされると、それを読んだ他のユーザーが「マフラーが雪でふさがれると、排ガスが車内に入り込み危険」などの情報を発信し、注意をうながすケースもあった。
 長野県佐久市の柳田清二市長はツイッターで道路の状況や孤立者情報の提供を呼びかけ、その返信で市内の状況把握に努めた。ツイッターを通じて市民と対話し、雪捨て場の情報なども発信する様子に、「災害時のトップとしてあるべき姿」(ツイッター)と称賛の声も寄せられた。
 ◆報道に不満の声も
 一方、「なぜマスコミは山梨の現状を報道しないのか」という不満の声も上がり、主にNHKが批判の対象となった。その理由はさまざまに詮索され、ソチ五輪でテレビ局が多額の放送権料を支払っているため、災害ニュースが後回しや手薄になっているという“事情通”の指摘も。匿名掲示板では、大手マスコミの取材拠点が都内にあるため、交通が遮断された地に取材班が到着するのが遅れるといった報道態勢の問題を指摘する声も散見された。
 批判はマスコミ以外にも飛び火。首相動静で、安倍晋三首相が大雪の影響が続く16日夕、東京・赤坂の天ぷら料理店で支援者らと会食していたことに、前衆議院議員の女性が「せめて、会合場所を公邸にできなかったのか」とかみついた。これに音楽評論家の女性、メディアジャーナリストの男性らが同調し、安倍首相のフェイスブックが一時炎上する一幕も。しかし、「的確な指示がしてあればいい」「天ぷら食べなかったらどうにかなったのか」「災害があったら首相は断食でもしないといけないのか」などと批判した側への逆批判も起き、ジャーナリストらが釈明に追われる状況にもなった。
 ◆不可欠なインフラ
 山梨などとは対照的に、被害が少なかった地域では「雪遊び」の写真が盛んに投稿された。東京・渋谷からは「道玄坂がスキー場になってる」(ツイッター)として道路でスキーに興じる姿や、ハチ公像の横に作られた「友達」の犬の雪像の写真がアップされた。芸術的な仕上がりの雪だるまの写真も多数投稿。“力作”を披露する書き込みからは、「一人の雪遊びでも共有できるから楽しい」という感覚がうかがえる。
 被災地域でネットユーザーが「ニュースが当てにならないから、自分たちが情報を外に出さないと」として積極的に動いた今回の大雪。ただ、停電や携帯電話の基地局のトラブルで、情報を発信したくてもできなかった人々が大勢いたことも事実だろう。ネットが今や必要不可欠なインフラになっていることを、再認識させた天災だった。(本)
【用語解説】今年の大雪
 2月8日に関東甲信を中心に記録的な大雪となり、都心で20年ぶりに積雪が20センチを超えた。さらに14日から15日にかけて本州南岸を通過した低気圧の影響で再び大雪に。19日現在で大雪による死者は8県で20人。山梨県では積雪のため電車や道路が通行不能になり、車内に閉じ込められた人が出たほか、物流もストップ。埼玉県秩父市や群馬県南牧村などでも住民が孤立した。

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