詩人・石川善助の足跡たどる 仙台文学館・6月30日まで特別展

仙台市出身の詩人石川善助(1901~32年)の歩みをたどる特別展が、青葉区の仙台文学館で開かれている。大正-昭和初期に情感あふれる詩を生み出し、31歳で事故死した詩人を再評価しようと、同館が開館25周年記念事業として企画した。6月30日まで。

宮沢賢治らとの交流も紹介

 「詩人・石川善助をたずねて~北方への道のり」と題した特別展には、自筆の創作ノートや書簡、作品が載った詩誌など約130点が並ぶ。仙台の方言や伝承を題材につづった随筆や童話もあり、多様な表現に挑んだ若者の気概が伝わる。

 善助は仙台・国分町の老舗商店の長男に生まれた。詩作に目覚めたのは仙台商業学校(現仙台商高)時代。卒業後は仕事の傍ら仲間たちと詩誌を発行するなど文学活動に打ち込み、地元詩壇のリーダー的存在になっていった。

 仙台のあちらこちらを散策して想を練り、東京の詩誌にも寄稿。朗らかな人柄で広く愛されたという。後に上京し、4年近くたった梅雨時、不慮の事故で命を落とした。死後、友人らの手で遺稿がまとめられ、随筆集「鴉射亭随筆(あしゃていずいひつ)」や詩集「亜寒帯」が世に出た。

 童謡も書いた善助は、仙台で日本初の童謡専門誌「おてんとさん」を手がけた郷土文化研究家の天江富弥(1899~1984年)や詩人のスズキヘキ(1899~1973年)と親交を深めた。

 特別展では、岩手県花巻市出身の童話作家宮沢賢治(1896~1933年)や福島県いわき市出身の詩人草野心平(03~88年)との交流も紹介する。24歳の頃、当時無名だった花巻の賢治を訪れて意気投合し、賢治の作品を児童文学誌に推薦したこともあった。心平とは上京後に知り合い、彼が営む焼き鳥屋の屋台を手伝うなど親しく付き合った。

 「北方への道のり」は、善助のまなざしが北の風土に向けられていたことに由来する。北海道の海などが題材の「北太平洋詩篇」という詩群があり、同館の赤間亜生副館長は「厳しい環境で詩作に励み、結実した到達点の一つに北太平洋詩篇があった。志を生涯貫いた姿勢を伝えたい」と話す。

 6月1日には善助の研究者木村健司さんを招いたトークイベント、15日には俳優の芝原弘さん、菊池佳南さんによる詩や随筆などの朗読公演がある。いずれも午後1時半から。事前申込制で受け付けは先着順。

 午前9時~午後5時。月曜と5月23日、6月27日は休館。観覧料は一般810円、高校生460円、小中学生230円。連絡先は文学館022(271)3020。

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