誰が買い、どう使う?「中古スマホ」活況続く理由 スマホ価格高騰で新品の販売台数は低迷中

今年の9月も「新型iPhone」がお披露目されそうだ。新機種は生成AIの搭載などがうわさされ、ユーザーや市場関係者から期待を集めている。ただ懸念されるのは、さらなる価格上昇である。

【写真】ゲオモバイルが販売する「Aランク」の中古スマホは傷1つないクオリティ

2019年発売の「iPhone11」は約7万5000円(64GB)だったが、2023年発売の「15」は約12万5000円(128GB)。こうした高額化の影響を一因に近年、スマートフォンの販売台数は減少傾向にある。MM総研によると、2023年の国内出荷台数は2628.6万台となり、2012年以降で最小となった。脱・小口現金で脱・現金管理

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一方、もはや生活必需品と化したスマホを求める人々が、急にいなくなったわけではない。一部の消費者は、比較的安く買い求められる中古品に流れている。MM総研によると、2023年度の国内中古スマホ販売台数は272.8万台(前年度比16.6%増)で過去最高となった。右肩上がりの成長が続く見込みで、2028年度には438万台を予想している。

中古スマホの用途は幅広く、さまざまな機種の取引が広がっている。

ハイエンド品を求める観光客

東京・JR秋葉原駅の間近に構える「ゲオモバイルアキバ店」。7月下旬のある日、午前11時の開店からほどなくして、店内はスマホを物色する客たちでにぎわった。ショーケースに整然と並んだ機種から気になったものを指さし、店員に状態確認を求める声が飛び交う。

同店は平均で1カ月当たり500~600台ほどのスマホを販売している。ゲオストアの榎本綾人アシスタントマネージャーは「秋葉原では外国人のお客様が全体の9割ほどを占める。売れ行きがいいのは10万円前後のハイエンド品だ」と語る。

取引が活発なのは、iPhoneの中でも高価格帯に当たる「Pro」や「Pro Max」だ。まだ手放す人が少ないため、現行機である「15」の同シリーズは人気なものの入荷しにくい。訪日観光客の主な目当ては、iPhone12から14あたりの高級機種となる。

ゲオモバイルが販売する「Aランク」の中古スマホ。傷ひとつない(記者撮影)

ゲオモバイルが販売する「Aランク」の中古スマホ。傷ひとつない(記者撮影)© 東洋経済オンライン

記者が同店の販売価格を確認すると、256GBのPro Maxは「14」で16万4780円、「13」で11万5280円(いずれも税込み、取材当時)。それぞれ定価から1万5000~3万円ほど安い。商品は傷の有無に応じて格付けされており、最上位のAランクは新品同様にきれいだった。

円安も後押しし、外国人観光客にとって中古スマホは魅力的なようだ。自分用はもちろん、ビデオ通話で母国の家族や友人に店頭の品物を見せ、どれが欲しいかをたずねる客も増えているという。榎本氏は「お土産として買う人もいるようだ」と推察する。

海外の中古市場では偽造品のiPhoneが出回ることもある。ゲオモバイルでは、買い取り時に真贋をチェックするほか、専用のソフトで前所有者のデータを削除し、センサーやタッチパネルなどの細部に至るまで動作確認。こうした姿勢で顧客からの信頼を得ている。

秋葉原と渋谷は売れ筋が違う

ゲオストアの小林巧エリアマネージャーは「地域ごとに売れ筋の機種はまったく違う」と話す。例えば、渋谷のゲオモバイル。iPhone5~7あたりの旧式を求める客が急増している。これらの販売価格はおおむね1台数千円ほどだ。

「エモい」写真が撮れると若者に人気の旧型iPhone(記者撮影)

「エモい」写真が撮れると若者に人気の旧型iPhone(記者撮影)© 東洋経済オンライン

安価なことから、おもちゃのカメラ感覚で使う若者が目立つという。「最近の機種より粗い画質が『エモい』とSNS上でブームになった。流行やファッションに敏感な層に受けており、韓国人女性が旅行ついでによく探しに来る」(小林氏)。

もちろん、中古スマホの需要は外国人ばかりにとどまらない。中古スマホはSIMフリーやロック解除済みの品を選べば、電話番号を変えずに機種変更ができる。日本でも、用途ごとに機種を分ける「2台持ち」が浸透しつつある。子供に与える初めての携帯電話として、あえて中古品を選ぶ親も増えている。

上記のような目的では、格安SIMを利用するケースも多い。大手キャリアと比べて通信速度が不安定などのデメリットはあるものの、月々の料金を大幅に抑えられる。ライオンズ仙台五橋

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ゲオモバイルを展開する業界最大手ゲオホールディングス(HD)でも、2023年度の中古スマホ・タブレットの売上高は約357億円(前年度比12.3%増)と好調だった。同年度末で全国に約600店あるゲオモバイルを、2025年度中には800店へ増やす方針だ。

過度な新品端末の値引きをめぐる規制強化も味方する。大手キャリアによる「1円スマホ」を規制しようと、国は2019年10月に電気通信事業法を改正。携帯電話と回線契約をセット販売する際の値引きに、2万円(税抜き、以下同様)の上限が設けられた。

2023年12月には、値下げ上限が4万円(端末価格が4万円以下の場合は上限2万円)に緩和された。一方、これまでは除外されていた端末単体での販売も対象となり、実質的に規制は厳しくなった。

ゲオHDモバイル商品課の藤巻亮マネージャーは「かつては新品を安く入手できたため、中古を選ぶ動機が弱かった」と振り返る。中古相場が手頃なiPhone SE2など、初期費用を抑えられる機種の人気が高まっているという。

「埋蔵スマホ」は3億台超の試算も

販売だけでなく、買い取りも増えている。古くなったスマホの処分方法といえば、機種変更する際の下取りが一般的だった。ただ、大手キャリア3社の還元方法はポイント支給。中古店に持ち込めば、現金に直接換えられる。

藤巻氏は「中古スマホの取引は、日本より海外の方が活発だ」と指摘する。ゲオHDは関西大学の宮本勝浩名誉教授と協力し、使わなくなって家庭などに保管されている携帯電話の数を試算。2022年時点で国内に約3億0555万台あり、市場価格の合計は約6兆5000億円に上るとの推計が出た。

中古市場のさらなる活性化には、こうした「埋蔵品」の活用が欠かせない。ゲオHDは昨年7月、無料で簡単にスマホを査定できるアプリをリリース。店頭では美品だけでなく、画面の破損などがある「ジャンク品」も積極的に買い取っているという。

中古スマホの売買で得する秘訣はあるか。藤巻氏は「新型iPhoneの発売直後は、1年で最も買い取りが盛り上がる時期」と明かす。最新機種を手に入れた消費者が、それまで使っていたものを手放す傾向にあるからだ。

業者側は例年この時期、客を呼び込もうと、通常よりスマホの査定価格を優遇するキャンペーンを仕掛ける。買う側にとっても、この時期は中古市場の在庫が潤沢となるため、希望に添ったものを選びやすい。新型iPhoneの話題に沸く9月、実は中古店も活況を迎えるシーズンなのだ。

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