誰でも自由に利用できる公共空間なのに…「公開空地」不適切事例が横行 記者が仙台の実態を調査

仙台市中心部でビルやマンションの開発に伴い増加している「公開空地(くうち)」で、駐車場としての私的利用や立ち入り規制といった不適切な事例が少なくない。公園のように誰でも自由に利用、通行が可能な本来あるべき状態からは程遠く、「後悔空地」との皮肉もささやかれる。市中心部の公開空地を回り、現状を確かめた。(せんだい情報部・門田一徳)

 [公開空地] 1970年の建築基準法改正で総合設計制度に規定された。敷地内に一定の広さの公共空間を設けることで、建物の容積率や高さの制限を緩和する。仙台市役所上杉分庁舎(青葉区)は公開空地を設けたことで、増床と高さ規制の緩和による3階分の高層化が可能となり、14階のビルになった。市の許可数は63件(2024年3月末)。内訳は事務所42件、店舗24件、共同住宅17件、ホテル6件など(複合用途を含む)。

駐車場や駐輪場、通行を妨げる障害物が置かれるケースも

 地元の市民団体「未満建築デザイン・ファーム」が2022年に発行した「仙台滞在空地マップ」を手に歩くと、法令順守の意識からかけ離れた実情が見えてきた。

 青葉区の青葉通沿いのオフィスビルは、一部を車両3台分の駐車スペースに使っていた。運転手不在のまま、2時間以上駐車している車もあった。

 ビル管理会社の担当者は「公開空地との認識はあるが、ずっと前から荷降ろしなどの駐車スペースに利用している」と説明した。

 若林区の愛宕上杉通沿いのホテルは、コンビニエンスストア脇のスペースを駐輪場所にしていた。「無断駐輪禁止 ホテル関係者以外の車両は予告なく全て撤去します」との張り紙があった。

 公開空地は管理者、所有者のいずれも、駐輪場として使うことが基本的に禁止されている。ホテル側に問い合わせると、張り紙は撤去された。

 青葉区の愛宕上杉通沿いのホテルは、歩道との境界に大きなプランターを30センチ前後の狭い間隔で設置。事実上、人を通さないための障害物となっていた。

 他にも駐車スペースであることを示す「P」のマークが路面に記されたり、ロープを張ったりしている状況が複数のビルで見つかった。

 規制緩和のボーナスと公開空地の私物化という利益の二重取りを許可権者はどう見ているのか。市建築指導課の担当者は「公開空地の適切な維持管理を含めて建設時に容積率などを緩和している。不適切管理が常態化している場合は改善を求めていく」と話す。

 東北工大の斎藤隆太郎准教授(建築設計・計画)の話 公開空地はマルシェやライブの開催などプラスの効果を中心に取り上げられることが多く、適切に管理されないケースはあまり注目されていない。所有者や管理者は自分の土地に知らない人を入れたくない心理が働く傾向が強く、公開空地での通行や休憩を妨げるような状況が生まれやすい。監督する立場の自治体も設計時の図面などは確認するが、完成後の管理までは十分にチェックできていないのが現状だ。

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