4月12日、新しい資本主義実現会議(議長・岸田文雄首相)が開かれ、6月までにまとめる労働市場改革の原案が示された。
岸田首相が掲げる「新しい資本主義」の実現には、労働市場改革が不可欠だとして、労働力の成長分野への移動を促し、年功序列や終身雇用を前提とした、日本型雇用慣行の改革に取り組む。
在職者の学び直し(リスキリング)は現在、企業経由の給付が75%で個人給付は25%だが、これを個人主体に見直し、5年以内をめどに、個人への直接給付が50%を超えるようあらためる。
退職所得課税では、長期勤続者に対する優遇措置の縮小を検討する。現行の退職所得課税制度では、勤続20年を超えると、所得計算時の控除額が1年あたり40万円から70万円に増え、税負担が軽くなる。労働移動の円滑化を阻害している要因のひとつと指摘されており、2024年度以降の税制改正で見直しを議論する。
転職を促すための失業給付制度の見直しも明記した。自己都合の離職者は、2~3カ月を経ないと給付金が受給できないなど、会社都合の離職者に比べて期間がかかる状況をあらためる。
実現会議は、この原案をもとに検討を進め、労働市場改革の全体像を6月までに指針として示す。
労働市場改革の原案が報じられると、SNSでは、長期勤続者に対する優遇措置の縮小に対して批判的な声が多く上がった。
《とうとう退職金課税も改悪か》
《これじゃあ長く働いても良いことないじゃん すぐ辞める人の流動性高めるなんて言いながら、長年働く人の旨味減らしているほうが大きくてなんの意味もない》
《これって今の40代の人1番キツくない?》
《退職金控除額70万円を見直すんじゃなくて通常の控除額を40万円→70万円にすればいいんだよ。つーか気軽に増税すんじゃねーよ》
現行の退職所得課税制度では、退職金を一括で受け取る場合、「退職所得」として税金がかかるが、長年の勤労に対する報償の意味合いがあるため、税負担が軽くなるよう配慮されている。
退職所得控除額は、勤続20年以下だと「40万円 × 勤続年数(最低80万円)」だが、20年超だと「800万円 + 70万円 ×(勤続年数 – 20年)」。つまり、勤続20年なら退職金800万円まで、30年なら1500万円まで、退職金に税金がかからない。
退職金が2000万円でも、勤続30年の場合、退職所得控除額は1500万円となるので、所得税額は15.3万円となる。
退職所得課税については、2023年度与党税制大綱でも《勤続年数が20年を超えると一年あたりの控除額が増加する仕組みが転職などの増加に対応していないといった指摘もある》《適正かつ公平な税負担を確保できる包括的な見直しが求められる》と明記されていた。
だが控除額を縮小させるだけでは、現在の40代、50代にはたまったものではない。実質「退職金増税」とならない制度設計を岸田首相にはしてほしいものだ。