諮問機関が宿題 世界文化遺産の富士山に“登録抹消”の黄信号

紆余曲折を経て、ようやく世界文化遺産に登録がかなった「明治日本の産業革命遺産」。その一方で、2013年6月に世界文化遺産に登録された「富士山」に黄信号がともっている。

 実は、富士山は登録と同時にユネスコの諮問機関「イコモス」から、環境保全のための“宿題”を課せられている。その宿題をクリアしないと、世界文化遺産の認定を取り消される恐れがあるのだ。

 宿題の内容は、例えば「登山道の収容力を研究し、その成果に基づき来訪者管理戦略を策定すること」「登山道及びそれらに関係する山小屋、トラクター道のための総合的な保全手法を定めること」などと具体的だ。他にも「電柱が富士山の景観を阻害している」「富士五湖のモーターボートやジェットスキーが周辺の平和な環境を乱している」などと細かく指摘されている。

 イコモスはこれらの指摘に関し、文化庁や静岡、山梨両県の世界遺産推進課に対し、来年2月1日までに環境保全策を提出するように命じている。果たして、この膨大な量の宿題を、あと半年ちょっとでクリアできるのか。文化庁記念物課の担当者はこう言う。

「登録と同時にイコモスから勧告を受け、提出期限を区切られるのは異例のケースです。しかし、個別にクリアできていない部分があるからと、来年2月に即、抹消される可能性はないとみています。昨年11月、イコモスに『資産の全体構想・戦略』を示した際、悪い感触はありませんでした」

 そもそも、どの世界遺産も登録してから6年ごとにイコモスに保全状況を報告する義務があるという。富士山が来年2月をクリアしても、6年後に抹消される可能性はゼロではなさそうだ。事実、ドイツのエルベ渓谷は09年に抹消され、オマーンのアラビアオリックスの保護区は、石油資源の開発を優先し自ら登録を取り下げている。

 それにしても、富士山に課せられたハードルは相当に高そうだ。

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