学校の校則や決まりごとには謎のものが多い。「ケガをするから廊下を走るな」というのはわかるが、スカートの丈は膝下何センチと言われても、その「何センチ」の理由がイマイチ判然としない。
それでも、それが「ルール」だと思えるのは、その背景に、非行の防止や生徒の管理、社会化など、学校側の目的が見えるからだろう。
しかし、なかには本当に謎なものもある。たとえば、小学校の「シャーペンの使用禁止」だ。ネットを見てみると、シャーペン禁止となっている小学校は全国各地にあるようだが、「床にシャーペンの芯が落ちると汚れるからと聞いた」や「シャープだと線が細くて目に良くないと説明された」など理由はバラバラで、何だかスッキリしない。
ルールであるからには、そこには何か合理的な目的があるはずだ。ルールに通じた法曹はこの決まりをどう見るのだろうか。日弁連で「市民のための法教育委員会」の委員をつとめる矢田健一弁護士に聞いた。
●校長の「裁量権」を逸脱した校則は許されない
「実は、私も小学生のころから、『なぜ、シャーペンを使ってはいけないか?』について疑問に思っていました」
矢田弁護士は率直な感想をこう漏らす。そのうえで、次のように法的な解釈を加えていく。
「校長は、より良い教育環境を作るために校則を作ることができます。そして、校則を作るとき、校長には広い裁量権が与えられています。ただ、広い裁量権が与えられているといっても、どんな校則でも作ってよいわけではありません。
校長がその校則を作った目的の合理性や必要性から、裁量権を逸脱しているような校則は許されない校則となるでしょう」
●シャーペンを学校に持ってくることを禁止する目的とは?
では、シャーペン禁止は、校長の裁量権を逸脱しているとは言えないのだろうか。
「シャーペン禁止という校則の目的は、たとえば、『筆圧を覚えるため』ということが考えられます。私個人の考えとしては、この程度の目的では、シャーペンを禁止するほどのことではないと思いますが、法的には、校長の裁量権を逸脱しているとまでは言えないでしょう」
そうは言っても、子どものころには、何の説明もされないまま、理不尽なルールを押し付けられた気がするが・・・
「一番大切なことは、変な校則(ルール)があった場合に、それを無批判に受け入れるのではなく、校則にどんな意味があるのかを考えることです。
そして教員の側も、生徒から疑問がでたら、一方的に校則を押し付けるのではなく、校則の目的や役割をしっかりと答えられるようにしておくことです。それを通じて、社会の様々なルールの大切さを理解できれば、変な校則にも意味はあるのかもしれませんね」
矢田弁護士の言うように、「シャーペン禁止」から得られる教訓は、学校の現場だけに限って役立つものではない。「なぜ?」という素朴な疑問を大切にすることは、社会に出て、理不尽と思えるようなルールに出くわしたときに、きっと無駄にならないだろう。
(弁護士ドットコム トピックス編集部)