東京電力福島第1原発事故で福島県9市町村にかかる警戒区域(対象約7万8千人)に、少なくとも6戸に男女11人の住民がとどまっていることが15日、市町村などへの取材で分かった。田村市4人、富岡町1人、楢葉町4人、川内村2人で、年齢層は50~90代。南相馬市、双葉町、大熊町、浪江町、葛尾村の5市町村はゼロだった。
立ち入りが原則禁じられた警戒区域での居住状況が明らかになるのは初めて。11人は自治体や知人に「故郷を捨てられない」「健康状態の悪い人がおり、移動すると危険」「ペットを世話したい」などと説明、動画投稿サイトでメッセージを発信している男性もいる。
こうした住民に、各自治体は区域外へ避難するよう説得してきたが、自分の意思でとどまることに一定の理解を示しているのも実情。支援物資や被ばく対策、緊急時の医療などをどう確保するか苦慮している。
田村市は最東部が警戒区域。市によると、50代の男性が原発事故直後に避難したが、区域の設定前に帰宅。知人の50代の夫婦、その親戚筋に当たる80代の男性が加わり、4人で暮らしている。
市は昨年6月ごろまで避難を呼び掛けていたが、50代の男性は「2人の健康状態が悪く、移動した方がリスクは高い」と拒否。担当者は「食料は畑で自給しているのではないか。心配だが、説得に応じないので仕方がない」と話している。
全域が警戒区域の富岡町に唯一とどまっているのは50代の男性。自宅の電気や水道は使えないといい、知人に「放射線は怖いが、知らない場所で何十年も暮らすより、短くてもいいから愛着のある土地に住んでいたい」と説明している。
大半が警戒区域の楢葉町では、90代の女性と娘夫婦が3人で、70代の男性が1人で暮らしている。川内村では80代と50代の女性がそれぞれ1人で住んでいる。
文部科学省によると、警戒区域の積算線量推計値(単位はミリシーベルト)は昨年12月11日時点で、富岡町が10.5~91.5、楢葉町が3.9~11.8、川内村が6.0~8.8、田村市が5.1~5.9。
[警戒区域]自然災害などから国民を守るため、発生地の市町村長らが立ち入りを禁じたり、退去を命じたりできる区域。災害対策基本法には罰則規定があり、立ち入り禁止や退去命令などに従わなかった場合、10万円以下の罰金または拘留を適用される可能性がある。原子力災害対策特別措置法は、原子力災害対策本部長が自治体などに必要な指示を出すことができると明記。東京電力福島第1原発の事故を受け2011年4月22日、本部長だった菅直人前首相の指示で福島第1原発から半径20キロ圏内が警戒区域に設定された。