貞山運河復興の象徴に 景観、防災機能を整備 宮城県

 宮城県は、仙台藩祖伊達政宗が開削を始めた貞山運河を改修し、東日本大震災からの復興の象徴とするビジョン策定に乗り出す方針を決めた。自然豊かな歴史遺産として価値を高める整備方法を検討する一方、津波被害を軽減する効果を実証していく。ビジョンを策定する座談会を早ければ10月に設置し、2013年度の具体的な事業実施を目指す。
 利活用を探るのは石巻市の旧北上川から岩沼市の阿武隈川までの貞山運河約49キロ。運河の歴史や環境、景観を生かし、観光地としての新たな魅力づくりを進める。運河沿いには防災林の役割を果たす木々の植樹や、復興と鎮魂の思いを込めた桜回廊を整備する構想もある。
 津波研究者の間では、貞山運河が震災時に津波の力を弱め、引き波で海岸防潮堤が壊れるのを防いだとの指摘もある。県は、座談会などの検討を通じ、減災効果が科学的に立証できれば、津波被害を抑える重要な防御機能としてビジョンに盛り込む。
 貞山運河は津波で被災し、一部で地盤沈下をした場所もある。県は復旧、拡幅工事を実施する方向で検討する。運河に流れ込む河川の津波対策も課題と捉え、河川堤防のかさ上げも一体的に考える。
 座談会は河川や津波、観光交流といった各分野の専門家や貞山運河の民間研究者らで構成する。協議内容を踏まえ、本年度中にビジョンを策定し公表。13年度に事業を開始する。県は最終的な構想実現までには10年以上かかるとみている。
 県は「歴史遺産である貞山運河を見直し、復興のシンボルに位置付けたい。津波の減災効果が裏付けられれば安全で魅力ある沿岸の地域づくりにつながる」と期待する。
 [貞山運河] 石巻市の旧北上川から岩沼市の阿武隈川までの間にある「北上運河」「東名運河」「御舟入堀」「新堀」「木曳堀」の総称。総延長は49キロ。運河名は開削を命じた伊達政宗の法号。舟運を目的に16世紀末に建設が始まり、1884年まで段階的に工事が進んだ。現在は治水や利水機能のほか、歴史的な土木遺産として親しまれている。

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