コロナ禍以降堅調だったマンション市場に変化が見え始めた。2024年7~9月の中古マンション成約数は前年比で3カ月連続減少、在庫も増加傾向だ。物価上昇を受けた日本銀行の政策金利引き上げにより、住宅ローンの変動金利も上昇。返済負担増加が住宅市場に影響を与えている。今月も2024年9月の首都圏新築・中古マンション市況と注目物件「ザ・ライオンズ世田谷八幡山」を解説する。(不動産アナリスト・岡本郁雄) 晴海フラッグのマンションとしての価値を分析!
首都圏の新築マンション市況【2024年9月度】
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まずは、2024年9月度の首都圏新築マンション市場を見てみたい。供給減少と価格上昇が同時に進行し、購入者の負担が増している状況が浮き彫りになっている。 発売戸数は、前年同月と比べ13.7%減少の1,830戸。契約率は65.5%となっており、2カ月連続で好不調の目安とされる70%を割り込んだ。 また、首都圏新築マンションの1戸あたり平均価格は7,739万円となっており、前年同月比では、1,012万円のアップとなっている。前年同月比で上昇率が1割を超えるのは、2カ月連続だ。東京23区の供給は614戸で供給シェアは33.6%。平均価格は、1億775万円と前年同月比で20.9%上昇した。 販売在庫数は5,025戸で、前月末よりも85戸の減少。2023年9月末の販売在庫数は4,737戸だったので、昨年対比では増加している。 ちなみに2024年度上半期(2024年4月~2024年9月)の動向によれば、2024年度上半期の首都圏における新築マンションの発売戸数は29.7%減の8,238戸。コロナ禍の2020年を下回り過去最少となった。 東京23区の2024年度上半期の供給戸数は3,242戸となっており、前年同期比42.9%の減少。一方神奈川県は、2,160戸の供給で前年同期比4.2%の上昇と地域別では唯一増加した。 エリア別に見てみると発売状況は下表のようになっている。 首都圏新築マンションの販売動向(2024年9月) エリア別の平均価格は、東京23区が1億775万円。東京都下が6,208万円、神奈川県が6,824万円、埼玉県が4,947万円、千葉県は、5,294万円。新築マンションの大幅な供給戸数の減少や価格上昇が続くことで、購入層が中古マンションへ流れることや当面賃貸を選択することが予想される。 またマンション市場全体の需給がひっ迫すれば価格面への影響はさらに大きくなるかもしれない。 下のグラフは、過去5年間の首都圏の新築マンション価格(平均価格)と契約率の推移を示す。ここ最近は契約率が継続して70%を下回っている。 続いて中古マンション市場を見てみよう。
首都圏の中古マンション市況【2024年9月度】
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2024年9月度の首都圏中古マンション成約件数は、前年同月比4.5%減少の3,047件となっており、3カ月連続で前年同月を下回った。価格の上昇が続く一方で供給も減少し、購入者が減少している状況だ。 成約価格は、前年同月比+5.3%の4,861万円。平均成約㎡単価は、対前年同月比4.7%上昇の75.86万円となっている。成約㎡単価が前年同月を上回るのは、53カ月連続となる。また、2024年9月の新規登録物件の㎡単価は、78.81万円となっていて前年同月比で8.3%上昇している。 首都圏の中古マンション市場動向2024年9月 2024年9月の新規登録物件数は、対前年同月比で4.8%減少の16,195件。在庫件数は前年同月比で1.9%減少し45,403件となっているが、前月比では2カ月連続で増加した。 下のグラフは、過去5年間の首都圏の中古マンション価格(成約㎡単価、在庫㎡単価)と在庫件数の推移を示す。在庫件数は、ここ2年ほどは4万5000戸前後で推移している。 東京23区の中古マンション価格は前年同月比+11.2% 次にエリア別の中古マンション動向を見てみよう。 エリアごとの数字を見ると、首都圏の中古マンション市場で価格帯の二極化が進行。高価格帯の取引が増加している一方、周辺県への需要流出も見られる。 成約㎡単価をみると、都区部に加え埼玉県や千葉県も対前年同月比、前月比で大きく価格を伸ばしている。成約件数は、東京都が前年同月比で-12.3%と大きく減少しているのに対し、千葉県は+19.9%、神奈川県は+2.2%と伸びている。 都区部の成約状況に目を向けると、都心3区の成約件数が対前年比21.7%の大幅減少。城東地区(-15.8%)、城南地区(-14.4%)、城西地区(-8.1%)、城北地区(+5.4%)。対前年比で成約件数が伸びているのは城北地区のみで、その城北地区も7月、8月はマイナスだった。価格の上昇に加え、新規登録物件が伸びず在庫が低水準にあることも要因だ。 成約平均価格は、都心3区が1億332万円、城東地区5,731万円、城南地区6,063万円、城西地区7,709万円、城北地区5,492万円。東京23区は、新築マンション価格の上昇が著しいが、中古マンション価格も手が届きにくくなりつつある。 埼玉県、千葉県、神奈川県では、中古マンションの成約平均価格はまだ値ごろ感があり、さいたま市が4,039万円、千葉県総武地区(市川市、船橋市、鎌ヶ谷市、浦安市、習志野市、八千代市)が3,611万円、川崎市が4,704万円。東京都心のように新築マンション価格が上昇すれば中古マンション価格の相場も上昇する可能性もあり注意が必要だ。 東京都の四半期ごとの成約データを見ると、24年(7月~9月)は前年同期(7月~9月)と比べ、1億1万円~の成約シェアは、10%から12.9%へと大きく伸びている。 東京都の中古マンション価格帯別成約件数 いっぽうで7,001万円~1億円の成約シェアは17.3%から15.7%へと減ってきており、いわゆる高価格帯の購入層の厚みが増えたわけではない。5,000万円以下で見ると51.5%から50.1%へ1.4ポイントの減少。低価格帯の成約シェアが大きく減っているわけではなく、東京都内でも二極化が進んでいるのだろう。
京王線の八幡山駅徒歩3分 日本初の『ZEH-M』、「ザ・ライオンズ世田谷八幡山」
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次に今月の注目マンション「ザ・ライオンズ世田谷八幡山」を紹介する。 「ザ・ライオンズ世田谷八幡山」は、京王線の八幡山駅徒歩3分、閑静で緑豊かな住宅地にある第一種低層住居専用地域に立地する地上3階建ての低層レジデンスだ。 建物は3棟構成で、大きなガラス窓から木漏れ日が差し込むエントランスラウンジ、3棟に囲まれた中央のスペースには植栽が鮮やかな中庭を設け、物件周辺の木立や豊かな緑に溶け込むデザインとなっている。 特徴となるのは、環境に配慮された高性能な設備だ。建物の断熱性能や省エネ性能を高め、屋上には太陽光発電設備を設置。日本で初めて『ZEH-M(ゼッチ エム)』および全住戸『ZEH(ゼッチ)』の両方基準を満たし、省エネと創エネを組み合わせて、1戸あたりのエネルギー消費量を120%以上削減を実現した。このことで年間約16万7千円の光熱費削減が期待されている。 建物には、冬でも室温18℃以上を保てる高い断熱性が備わっており、快適さとヒートショック予防に貢献。また、防災対策として、「SONA-L SYSTEM(ソナエルシステム)」を採用。災害時に「電気」「ガス」「水道」全てのライフラインが途絶しても、1週間以上自宅での生活が可能だ。昼間は太陽光発電、夜間は蓄電池と「エネファーム」から電力供給できるため、エアコンやシーリングライト、冷蔵庫、スマートフォン4台の使用をすることができる。また、共用部の照明のほか、タイマー制御のもとエレベーター、給水ポンプなどへも電力を供給する。 住戸は52戸で、43㎡から84㎡の3LDKが中心。専用の太陽光パネルや蓄電池が備わり、40代~50代の共働きカップルを主要ターゲットとしている。 販売開始は2024年11月中旬からで、2024年9月末時点で既に資料請求は2,000件超。特に都心通勤の共働きのカップルからの反響が多い。 2024年10月にオープンした「ザ・ライオンズギャラリー新宿」では、建物模型やコンセプトルームを見学できるほか、VRによる内覧体験や商談スペースを設置。「パワーカップル」の感性に響くような、モダンラグジュアリーをベースにした上質で洗練された暮らしのイメージを体験することができる。
マンション供給は、量から質への転換が求められる
2024年10月、中野区で進められていた中野サンプラザ跡地などの再開発計画が見直されることになった。当初予定していた事業費が建設費の高騰によって大幅に膨らんだことが理由だ。資源価格や人件費に加え金利もさらに上昇する可能性が高く、事業規模の大きなプロジェクトの事業計画の見直しは今後さらに増えるかもしれない。 また人口減少は都市部も含めて進む見込みで、かつてのようなマンションの大量供給は、求められていない。量から質への転換が求められる中、「ザ・ライオンズ世田谷八幡山」のような、環境性能の高い分譲マンションは、これから高く評価されるのではなかろうか。 一方、基本性能の低い住宅は、人口減少の中でさらに競争力を失う可能性もある。資産性を重視するなら、立地だけでなく住宅性能もよく確認して10年後、20年後も価値ある住まいを選ぶべきだろう。
岡本郁雄