買い物難民化、仙台中心部も加速 デパートまで歩くしか…

 近所の商店が廃業し、日常の買い物に困る高齢者が仙台市中心部でも増えている。「買い物難民」とも呼ばれ、過疎地だけにとどまらない深刻な問題になりつつある。高齢化社会のニーズをとらえ、食料品を戸別配達するサービスも始まった。
 青葉区大手町の主婦内田みつ子さん(75)は、日々の買い物に苦労している。近くにスーパーがなく、最寄りのデパートまで約1キロの道のりを通う。車はなく、買い物はもっぱら徒歩かバスだ。
 住まいのある住宅街にはかつて、精肉店や青果店が6店ほどあったが、大半は10年ほど前に店をたたんだ。内田さんは「仙台の中心部に住んでいても、買い物の不便さは過疎地と変わらない。気軽に買い物に行けるスーパーが近くにできるとありがたい」と訴える。
 経済産業省の推計で、買い物難民は全国で約600万人いるとされる。背景にあるのは商店の減少だ。
 仙台市経済局によると、2007年の市内の小売店は8012軒で、ピーク時の1988年(1万408軒)に比べて23%も落ち込んだ。郊外型大型店への一極集中で個人商店の淘汰(とうた)、廃業が進み、中心部に住む高齢者は食料品などを購入する店を失った。
 郊外のスーパーや大型店の撤退は、なおさら深刻だ。経営再建中のスーパー「モリヤ」が8月に店舗を閉鎖した青葉区芋沢地区。周辺に住む高齢者らは近場で買い物ができなくなり、他店への長い徒歩移動を強いられている。
 ある宅配業者はモリヤの閉店以降、芋沢地区に住む高齢者からの問い合わせが一気に増えたという。担当者は「高齢になると運動機能の衰えもあり、免許を返上している人も少なくない。車を持たないお年寄りにとって、近所のスーパーの突然の閉店は死活問題につながるようだ」と語る。
 買い物難民の増加を商機ととらえ、積極的な訪問販売を展開する業者も現れた。青葉区の鮮魚店「三陸おさかな倶楽部(くらぶ)」は昨年5月、近くにスーパーがない大手町地区とその周辺の高齢者宅を自転車で週1回訪ね、魚を販売するビジネスを始めた。配達先は約40軒に上り、評判は上々だ。
 店主の津田祐樹さん(29)は「遠くのスーパーまで通うことができない高齢者のニーズに応えた。ほかの食品販売店などとも連携し、いろんなメニューを提供できる仕組みを整備していきたい」と話している。

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