買い物難民解消へ 住民が移動販売誘致 仙台・将監地区

 商業施設が閉鎖された仙台市泉区の将監地区で、住民が「買い物難民」の解消に乗り出した。自宅の駐車場を開放して野菜や鮮魚の移動販売を呼び込み、定期的な「青空市」を実現させた。マイカーのない高齢者らは歓迎し、地元町内会も協力姿勢を見せている。同様の悩みを抱える郊外型の団地は増えつつあり、難民化を防ぐ試みとして注目されそうだ。
 移動販売車に駐車場を開放しているのは、将監11丁目の会社員馬場信子さん(41)。地元産野菜を販売する「産地直売所朝どり」(岩沼市)と、鮮魚を扱う「ぷちマーケットピノピノ」(青葉区)が2月から、毎週木曜日に午前10時から約30分間営業している。
 将監地区では、行政が開設した公設市場が8年前に廃止となり、民営で再出発した「将監ふれあい市場」も昨年9月、売り上げ不振で閉鎖された。高齢者にとっては、徒歩圏内に生鮮食料品店がなくなった。
 車を運転できる馬場さんは普段の買い物に支障がないが、近所の高齢者らから「買い物に困っている」と聞き、「何とか手助けしたい」と駐車場の無償提供を思い付いた。
 最初は、知人の紹介で朝どりに出店を依頼した。さらに朝どりが別の訪問先で一緒に営業していたピノピノに声を掛け、高齢者のニーズが高い野菜と鮮魚の移動販売が実現したという。
 特設の移動販売会場には毎週、高齢者を中心に30人ほどがやって来る。将監5丁目の主婦石垣つや子さん(64)は「ふれあい市場が閉店したときは、生活がどうなることかと思った。ここなら歩いて来られる」とほっとした様子だ。
 業者側も前向きだ。「売り上げは1日2万~3万円になる。まとめ買いする客も多い」と朝どりの岡崎信代表(65)。脱サラで移動販売を始めたばかりというピノピノの菊地富代表(49)は「1人暮らしの母親が病気で買い物に行きにくくなったことが独立のきっかけ。買い物弱者を生まない試みに協力したい」と力を込める。
 将監西町内会の関内昭一会長(68)は「毎週顔を合わせることで孤独死の問題も回避でき、地域の結束が強まる試み。町内会も一丸となって移動販売を盛り上げたい」と協力を約束している。

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