宮城県蔵王町遠刈田温泉の別荘地「蔵王山水苑(えん)」を中心とした貸別荘の取り組みを水平型分散ホテル「アルベルゴ・ディフーゾ」に認定する動きがある。6月にはイタリアから国際団体の会長が視察に訪れた。近い将来のインバウンド(訪日客)受け入れ再開に向け、地元の期待が高まる。
アルベルゴ・ディフーゾはイタリア語で「分散した宿」を意味する。地域に点在する空き家をホテルに見立て、宿泊客に飲食店などを回ってもらい、活性化を図るイタリア発祥の取り組み。国内では岡山県矢掛町の施設が2018年、国際団体アルベルゴ・ディフーゾ協会の認定を受けた。
山水苑を管理運営するNコーポレーション(東京)は18年、オーナーが使用していない期間を活用して貸別荘事業を始めた。「オーナーの負担軽減」「地域の活性化」「雇用の創出」を理念に掲げ、現在は近隣を含め約30棟を手がける。
同社によると、業績は新型コロナウイルス下も好調に推移。インバウンドから国内客にシフトした結果、仙台など近場の需要を掘り起こすことに成功し、70~75%だった年間稼働率は85%に上昇した。
6月24日、イタリアから協会のジャンカルロ・ダッラーラ会長が来日し、山水苑を視察した。会長は「観光部門のスタッフは何人いるのか」などと質問し、関心の高さをうかがわせた。
認定は早ければ秋ごろの見通し。周辺には他にも別荘地があり、認定されれば地域のアピール材料になる。貸別荘を担当する同社の宇田川敬之さん(49)は「協会の考えは私たちの地方活性化の取り組みとも一致している」と強調する。
東北では八幡平市の八幡平温泉郷も「地域まるごとホテル」をコンセプトに今秋の認定を目指している。