路線価 宮城は上昇率5.1%、全国5位 仙台圏がけん

仙台国税局が1日発表した2024年の路線価によると、県内の標準宅地5967地点の平均変動率は5・1%プラスだった。現在の計算方法に変わった2010年以降で最も大きく、都道府県別で全国5位の上昇率となった。都心部で再開発事業が相次ぎ、住宅需要も旺盛な仙台圏が全体をけん引し、上昇幅は前年に比べ0・7ポイント拡大した。

[路線価]主要な道路に面した土地1平方メートル当たりの評価額。相続税や贈与税の算定基準となる。国土交通省が発表する公示地価や売買実例、不動産鑑定士らの評価などを基に算定する。公表後の地価変動による不公平な課税を避けるため、公示地価の8割程度の水準としている。対象は全国約32万地点(標準宅地)で、うち東北は2万2052地点。国税庁のサイトなどで閲覧できる。

 県内10税務署の最高路線価は7地点で上昇した。2地点は横ばいで、下落は1地点のみだった。

 前年に15・6%も跳ね上がった仙台市太白区あすと長町1丁目(JR長町駅東口)の「あすと長町大通り」は、周辺のマンション建設が落ち着き、上昇率は5・4%に縮小した。青葉区本町2丁目(江陽グランドホテル前)の「広瀬通」は6・2%プラスで、4年ぶりに上昇率の県内トップになった。

 仙台市周辺でも価格の上昇が目立つ。多賀城市中央2丁目の「多賀城駅北線通り」は、子育て世代の住宅需要を反映して5・0%の伸びとなった。県南部の交通の要衝にある大河原町新南の「国道4号通り」も2・6%上昇した。

 このほか、大崎市では古川地域に人口が集中する傾向を反映し、古川駅前大通1丁目の「市道駅前1号通り」が4・0%プラスを記録した。

 県内で唯一の下落地点は気仙沼市本郷の「県道26号通り」。前年比3・6%マイナスとなり、下落幅は1・8ポイント広がった。東日本大震災後の土地区画整理事業や三陸沿岸道の開通がプラス要因とならず、むしろ水産業の不振が影響した。

 栗原、登米両市の2地点はいずれも人口が比較的多い場所にあり、変動率は横ばいと持ちこたえている。

 不動産鑑定士の西山敦さん(仙台市)は「物価高騰や金利上昇の影響も一部に見られ始めたが、(大衡村への)半導体工場の進出もあり、今後の動向は予断を許さない。仙台圏は震災後の高止まりが落ち着いたものの、下がる要素は今のところない」と分析する。

東北6県 初めて「下落なし」

 仙台国税局は1日、相続税や贈与税の算定基準となる1月1日時点の路線価を発表した。東北6県の標準宅地の平均変動率は前年比1・8%プラスとなり、9年連続で上昇した。県別では宮城が5・1%プラスで全国5位の伸び率。青森は前年の下落から横ばいに転じ、現在の計算方法となった2010年以降で、初めて東北6県からマイナスが消えた。新型コロナウイルスが5類に移行し、宮城を中心に不動産取引が再び活況を取り戻した。

 宮城は12年連続の上昇で、東北の平均値を押し上げた。青森は14年続いた下落から脱した。岩手は0・6%、秋田は0・9%、山形は0・3%、福島は0・9%のいずれもプラスで、前年より上昇幅は拡大した。ただ、仙台圏を抱える宮城と他5県の差は広がった。

 6県の税務署別最高路線価の上位10地点は表の通り。前年と順位は変わらず、トップ3は仙台市内が占めた。

 1位は青葉区中央1丁目(旧さくら野百貨店仙台店前)の「青葉通」で1平方メートル当たり363万円。変動率は4・6%のプラスだった。2位の青葉区本町2丁目(江陽グランドホテル前)は東北で最も高い6・2%の上昇率。前年は15・6%と高い伸び率だった太白区あすと長町1丁目(JR長町駅東口)の「あすと長町大通り」は5・4%プラスで、価格は39万円だった。

 仙台市以外で上昇した郡山市などの4地点は2・3~3・8%の伸び率。青森、山形、福島市の3地点は価格に変動はなかった。

 用途別のうち住宅地(12地点)は下落がゼロで、横ばいが8地点。上昇率トップは宮城野区鶴ケ谷7丁目の7・1%だった。

 主要商業地(12地点)で上昇したのは盛岡、仙台、石巻、秋田、郡山5市の5地点。残り7地点は横ばいとなった。主要工業地(6地点)は岩手、宮城、秋田3県で上昇した。トラック運転手の残業規制強化で物流が停滞する「2024年問題」を背景に、物流拠点向けの土地需要が高まったとみられる。秋田市新屋豊町は12・5%上昇した。青森、山形、福島3県は横ばいだった。

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